研究課題/領域番号 |
18K13664
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
佐々木 大輔 久留米工業高等専門学校, 材料システム工学科, 助教 (50772498)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 疲労き裂補修 / き裂進展 / 大型構造物 / プラズマ焼結 / 微粒子 / 疲労破壊 / 補修 |
研究実績の概要 |
今年度は、申請者が発案し予備的な実験により実現可能性が確認されているプラズマ法とペースト法を融合させたプラズマ・ペースト法による疲労き裂補修技術を,これまでのプラズマ法の補修サイズの10倍以上にあたる模擬き裂に対して適用し,その疲労き裂進展抑制効果を調査,解明した. 具体的には,S45C材に対してCT試験片にワイヤー放電加工機を利用して,模擬き裂を導入した.その後,模擬き裂部に対して鉄微粒子のみ(微粒子プラズマ材),鉄微粒子とオイルの混合ペースト(プラズマペースト材)をそれぞれ充填してパルスパターンを有するプラズマ焼結を行った.その後,荷重制御の疲労試験を行った.比較試験片として,未処理材,模擬き裂部に微粒子を充填せず同様のプラズマ焼結を行った熱処理材を用いて,その場観察疲労試験を行った.疲労試験後,光学顕微鏡を用いた模擬き裂の充填率確認,電子顕微鏡を用いた破面観察を実施した.また,試験片側面を研磨後,エッチングすることでプラズマ焼結時の組織変化を明らかにした. 1)プラズマ焼結時の模擬き裂先端の温度は,現在の試験片で最大で550℃程度まで上昇することが確認された.2)疲労試験の結果,熱処理材,プラズマペースト材,未処理材よりも微粒子プラズマ材の疲労寿命が長くなることが確認された.3)光学顕微鏡を用いた模擬き裂部の充填率確認の結果,充填率はプラズマペースト材,微粒子プラズマ材でいずれも十分でないことが確認された.4)電子顕微鏡を用いた破面観察結果より,破面に観察されるストライエーション幅は微粒子プラズマ材で最も小さいことが確認された.5)組織観察結果より,結晶粒径に大きな違いがなく,現在のプラズマ焼結条件では,結晶粒の粗大化が起こらないことが確認された.6)疲労き裂進展速度が微粒子プラズマ材の場合,未処理材の2分の1まで遅くなることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は疲労き裂進展速度を2分の1以下に抑制するき裂補修方法を構築することにある.前年度の研究結果により,き裂進展速度が2分の1に低下することが確認された.昨年度,小型試験片において焼結温度が550℃以上の時の静的強度特性を明らかにしており,550℃以上のときに,静的強度特性が上昇することを確認している.き裂先端温度を現在よりも高める方針を得ており,加えて,模擬き裂部の充填率も昨年度よりも高める手法を確立しているため,当初の計画以上に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は高い充填率の場合のき裂進展抑制効果の解明,炭素粉を混合させ母材に組成を近づけた場合の抑制効果の解明,き裂先端温度をより高くした場合の抑制効果の解明,有限要素法による力学的計算,硬さ試験によるプラズマ焼結による機械的特性の変化を解明する.
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次年度使用額が生じた理由 |
他の予算を獲得でき,本助成金からの研磨紙等備品の使用が予定よりも少額ですんだため.令和元年に,試験準備,実験,解析に使用する研磨紙,粉末,試験材料を購入する予定である.
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