バレル研磨は,複雑形状であっても比較的容易に表面粗さ向上が可能という他の加工法にない特徴をもつ一方,加工現象に直結する加工物と砥粒の相対運動の理解は困難であり,現状では経験に頼ったプロセスである.このため,本研究では加工物が保持されることから比較的高い制御性が期待されるとともに,理論構築も比較的容易であると考えられるジャイロ式バレル研磨に着目し,加工物と砥粒の相対運動に基づく理論構築に取り組んだ. 研磨加工では,加工物と砥粒の接触力が加工時間に直結することが知られている.このため,まず乾式条件における接触力の計測を,加工物のバレル内での設置位置,バレル回転数,砥粒投入量を変化させて実施した.この結果,加工物の設置位置がバレル底面および側壁に近く,砥粒投入量が大きいほど,接触力が大きくなることを明らかにした.一方で,バレル回転数による影響は加工物設置位置によって大きく異なることも明らかにした. 続いて,加工物前方の砥粒の盛り上がりに着目し,砥粒の盛り上がり量と接触力の関係を調査した.この結果,接触力と加工物上方に存在する砥粒量には強い相関関係があり,上方砥粒量が接触力の主影響因子であることを初めて明らかにした.また,粒径の異なる砥粒に対しても検討を行い,砥粒径1mmの鏡面加工用砥粒では砥粒運動量が接触力に及ぼす影響は僅かである一方,砥粒径10mmの砥粒では砥粒運動量の影響も無視できないことを明らかにした. 更にこの結果から,砥粒運動を抑制することができれば加工時間の短縮が期待できることが示唆された.このため,加工物上方に砥粒運動を抑制する抑え板を設置した実験も行い,抑え板の設置により加工時間を1/3程度低減できることも確認した.
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