研究課題/領域番号 |
18K13673
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
篠永 東吾 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (60748507)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大面積電子ビーム / 金型 / 表面仕上げ / 3次元形状 / 磁場 / ビーム誘導 / 電磁場解析 / 電子軌道 |
研究実績の概要 |
平成30年度の実施計画に挙げていた,磁場制御による電子ビーム誘導・集中現象の基礎的検討を行った.はじめに,平坦形状を有した非磁性体工作物の下部に磁石を設置し,磁石の設置位置による除去厚さの変化およびビーム照射位置の変化を実験的に調べた.ここで,非磁性体工作物としては大面積電子ビームの有効径約60mmより大きなサイズを有するアルミニウム平板を用いた.また,磁石として体積の異なる磁石3種類のネオジム磁石を用いた.工作物下部に設置する磁石の設置位置として,工作物表面から磁石表面までの距離Lmおよび,工作物中心から磁石中心までの距離(オフセット量)δmをそれぞれ変化させた.また,磁石近傍の磁束密度分布を明らかにするため,テスラメータにより磁石の磁場測定を行った. 工作物表面から磁石表面までの距離Lmおよび,工作物中心から磁石中心までのオフセット量δmを変化させて大面積電子ビームを照射した結果,磁束密度が大きい領域に工作物を設置すると,磁石を設置しない場合と比較して除去厚さが急激に増大することが分かった,本結果は,磁束密度が大きい領域に電子ビームが集中して照射され,工作物に照射されるエネルギー密度が増大したためであると考えられる. 一方で,Lmおよびδmを変化させてビーム照射位置の変化を観察したところ,磁石の磁場が及ぼす適切な位置に工作物を設置することで,平坦形状工作物表面に照射されるビーム照射位置を誘導することができることが分かった.本結果は,工作物近傍の磁場を制御することにより,高アスペクト比底付き穴を有する工作物の穴底面など,3次元複雑形状を有する金型表面への電子ビーム誘導が可能であることを示唆している.また,電子ビームを効率良く複雑形状金型表面へ誘導することが可能な工作物近傍の磁場を明らかにするため,電磁場解析モデルの構築を着手している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究計画で予定していたとおり,磁石の磁場が及ぼす適切な位置に工作物を設置することで,平坦形状を有した非磁性体工作物表面に電子ビームを集中して照射することが可能であることを明らかにすることができた.磁束密度が大きな領域に工作物を設置した場合,磁石を設置していない場合と比較して除去厚さが増大する結果が得られた.また,工作物を磁石の磁場が及ぼす適切な位置に設置することで,平坦形状の工作物表面に照射されるビーム照射位置を誘導することができることが分かった.本結果は,高アスペクト比底付き穴を有する工作物の穴底面などの3次元複雑形状を有する金型表面に対して電子ビーム誘導が可能であることを示唆しており,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度においてはおおむね順調に研究計画を遂行することができたことから,次年度の計画通り3次元複雑形状金型表面仕上げの基礎検討として,穴形状を有した非磁性体工作物の下部へ磁石を設置し,穴底面の表面仕上げが可能かを明らかにする.はじめは,電磁場解析モデルによって,工作物近傍の磁場などを解析することで,電子ビームを効率良く穴底面へ誘導することが可能な適切な磁石の設置位置について検討する.次に,穴深さと穴径が同等な工作物を用い,穴底面への電子ビーム誘導および表面平滑化が可能かについて実験的に明らかにする.得られた結果を元に,高アスペクト比穴底面などの更なる複雑形状を有する金型の表面仕上げついて検討する.
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