風力や太陽光といった自然エネルギーを貯蔵するための次世代の蓄電システムとして、レドックスフロー電池(RFB: Redox Flow Battery)が注目を集めている。これに伴い、RFBに関する研究が盛んに行われているものの、実用化には更なる充放電性能の向上が求められている。元来、RFBは材料科学の研究者によって触媒の選定や電極材料の合成など、主に微視的な視点からの高性能化が図られてきた。これに対し本研究では、巨視的かつ数理的な視点からのRFBの高性能化を目指し、電極構造や各種設計パラメータを対象とした最適設計に関する研究を実施した。
最終年度は、前年度までに得られた成果を洗練化することに注力した。具体的には、マルチフィデリティ設計法とトポロジー最適化を統合した基礎的なフレームワークを、流体の基本的な問題を対象としたトポロジー最適化において検証した上で、RFBの流動場を対象とした方法論へ拡張した。流体の基本的な問題については、マルチフィデリティ法の考え方に基づき、層流問題における単純なトポロジー最適化で得られた結果から、間接的に乱流問題における有望な設計解を見出せることを示した。この成果については構造最適化の分野でトップジャーナルの一つであるStructural and Multidisciplinary Optimizationに採択された。またRFBの流体場を対象とした方法論については、単純な二次元のモデルから得られた最適化構造のデータセットを利用することで、実際の三次元の流動場において有望な設計解を間接的に導出することに成功した。この成果については設計工学の分野で著名な国際会議であるASME DETC Conferenceに採択された。
|