研究課題/領域番号 |
18K13676
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
田所 千治 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00736770)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トライボロジー / 潤滑油 / 添加剤 / 自己組織化膜 / 表面テクスチャ / 薄膜計測 |
研究実績の概要 |
機械システムの可動部では摩擦損失を低減させるために潤滑油が用いられている。潤滑油は、主成分である基油と少量の添加剤から成る。潤滑油が摩擦損失を低減させるのは、摩擦面に潤滑膜を形成させて金属面同士の直接接触を妨げるためである。潤滑膜には、基油が流体力学的に作用して形成させる流体膜と、添加剤が金属表面に優先的に吸着して自発的に形成させる自己組織化膜がある。本研究では、自己組織化膜によるnmオーダーの凹凸(自己組織化ナノテクスチャ)と基油との相互作用を潤滑機能として応用した低摩擦な潤滑システムの創成を目的としている。 2年目となる本年度では、初年度に構築したサブナノメートル分解能の高精度膜厚分布計測システムを用いて、添加剤が自律的に形成させる自己組織化膜の成長過程を調べた。また、同システムに摩擦力の計測機能を追加することで、成長した自己組織化膜の膜厚(潤滑膜厚)を計測した上で、摩擦係数を計測できるように改良した。代表的な添加剤として直鎖脂肪酸のステアリン酸、基油としてヘキサデカンを用いて、摩擦係数と潤滑膜厚に対する添加剤濃度の影響を調べた。その結果、濃度が高いほど自己組織化膜は厚く成長し、摩擦係数は減少することがわかった。自己組織化膜が厚く形成されるほど固体面同士の直接接触を妨げるので、摩擦係数は低減される。本研究で開発した計測システムにより、添加剤による摩擦低減効果を定量的に評価できることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験装置の改良により摩擦力と膜厚の同時計測を可能とし、自己組織化膜の膜厚と摩擦係数に対する添加剤濃度の影響を明らかにした。これにより、本研究は概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
自己組織化膜の成長過程に対する添加剤濃度の影響の調査が完了したことから、今後は、自己組織化膜の成長過程に対する添加剤の種類の影響について調査する。
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