本課題では,機械システムの基となる機械要素の潤滑技術の発展を目的に,「潤滑膜内の油のレオロジー特性」を測定できる技術の構築と,それを応用した油膜内のレオロジーについて研究を進める. 2018,2019年度の研究では,蛍光測定システム,および転がり-すべり型の潤滑試験装置の構築を行った.さらに,サファイアアンビルセルによる高圧下での蛍光スペクトル測定を行い,蛍光観察から粘度測定における一連の解析方法について検討し,その方法を用いて潤滑油の粘度を算出できることが分かった. 2020年度の研究では,測定システムを用いた応用実験として,各荷重条件における潤滑面の蛍光スペクトル測定を行い,その解析結果から粘度分布を求めた.粘度分布は流れ方向に対して一次元の分布を求めるとともに,潤滑面の二次元分布の測定も行った.これらの結果より,接触域における圧力発生とそれとともに起こる粘度上昇の現象を詳細に理解することができ,実現象と潤滑理論について比較,検討することが可能となった.特に,二次元分布を求めたことにより,接触域入口部での粘度上昇がくさび作用による圧力上昇に起因していること,および接触圧力の高い領域で油の固体化が生じることが明確に理解できるようになった.さらに,荷重と油のレオロジー変化についても整理でき,流体潤滑域における粘度上昇,弾性流体潤滑域の高圧部で起こる油の固体化を明らかにした.また,その結果が従来の潤滑領域図での検討結果と一致することも明らかとなり,測定結果の妥当性も確認することができた.一方,今年度の実験を通して,本方法の測定分解能と測定精度に関する問題も明らかとなり,今後,測定システムを含めた改良が必要であることも分かった.
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