マイクロ工学で重要な微小系の気体の振舞いは,通常の巨視的流体力学では正確に記述できない.この場合,通常は,微視的立場に立つ分子気体力学が必要になる.しかし,幸いにして,微小系流れの多くは物体表面での気体流速の「すべり」等を考慮して通常の流体力学を適切に補正すれば扱える(すべり流理論).従来,この理論は粘性・熱伝導性が支配的な拡散的現象を主な対象としていた.本研究では,この理論を拡張し,気体中の波動の現象を扱えるようになった.また,理論で必要なデータベースを充実化した.これらの成果は,分野での学術的意義に加え,実際の微小系気体流の解析のための枠組みを増強・整備できたという意義をもつと考えられる.
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