本研究は,高粘度の液で濡れた粉体のシミュレーションモデル開発およびそれを用いた粉体挙動の解明を目的とするものである.産業プロセス内で使用されている高粘度の液(例えば,Na-LASやHPC)の中には,そのレオロジー特性がべき乗則で表現されるものが多い.べき乗則流体で濡れた粉体の挙動を精度良く予測するためには,粉体粒子に働く力を正確に表現するモデルが必要不可欠である.本研究では,相対運動をしている2粒子間に形成されるべき乗則流体液架橋内部の圧力分布を潤滑理論より導き出し,それにより粒子に働く力(潤滑力または粘性力)をモデル化することに成功した.これは,平成30年~31年度にニュートン流体液架橋に対して導出した理論を発展させ,より複雑なレオロジー特性を示す流体に適用可能にしたものである.開発されたモデルと直接数値計算(DNS)により得られた結果の間には非常に良い一致が見られることを確認することができた. また,本年度は平成30年~31年度に開発された粒子剛性低減手法の理論的拡張を行った.一般的に粒子同士が接触している際には,接触面内部応力分布の非対称性に起因する回転抵抗が生じる.そこで,粒子回転方向の運動方程式を無次元化し,粒子剛性を低減した際に必要な潤滑力や粘性力のスケーリング則の導出を行った.その結果,粒子並進運動に対するスケーリングと,回転運動に対するスケーリングが一致するという結論を得ることができた.これにより,付着力の働く粒子の回転運動についても,大きな時間刻みで効率的な計算を行うことが可能となった.
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