研究課題/領域番号 |
18K13692
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
深田 利昭 一般財団法人電力中央研究所, エネルギー技術研究所, 主任研究員 (30812127)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 流体-粒子相互作用モデル / 非質点粒子 / 体積平均 |
研究実績の概要 |
固体や液滴、気泡などの形態をとる粒子群の集団挙動の予測は、雲の形成過程といった自然現象の解明や微粉炭燃焼発電といった産業応用に関わる非常に重要な技術である。粒子群の集団挙動を予測する際には、背後の平均的な流れに沿った移流だけでなく、非解像な乱流構造に起因する粒子群の拡散挙動を適切にモデル化する必要がある。このような現象の理解には乱流-粒子相互作用のシミュレーションが有効と考えられる。しかしながら、粒子を質点と仮定する従来の解析モデルでは、粒子サイズが大きな影響を与えることが実験的に示唆されているにもかかわらず、粒子サイズの影響を充分に考慮することができない。 深田らは、基礎方程式に局所体積平均を導入することにより、計算負荷を増大させることなく高精度な解析が可能な粒子モデルを既に提案している。そのモデルでは、粒子表面応力分布や流れの擾乱効果を新たに考慮することで、粒子に働く力と流体が受ける反作用力を適切に与えることができる。本年度は、そのモデルの適用範囲を粒子サイズに関して拡張することで、これまでの計算格子幅や粒子サイズの制約を取り払った。さらに定常・非定常流れについて提案モデルの有効性を確認した。以上により、幅広い条件での乱流-粒子相互作用を調べるのに有効なモデルを構築した。 次に、構築したモデルに基づく乱流-粒子相互作用のシミュレーションを実施するため、その解析コードを作成し、その妥当性検証として、粒子混入による乱流への影響に関する既往研究との比較に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乱流-粒子相互作用のシミュレーションで想定される条件の範囲に対して、モデルの適用範囲拡張を実施し、さらに構築したモデルに基づく乱流-粒子相互作用のシミュレーションにも着手しているため、概ね計画通り進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
まず構築したモデルに基づく乱流-粒子相互作用のシミュレーションについて、コードおよびモデルの検証を進める。二年目となる今年度は、最も基礎的な乱流である一様等方乱流について、混入した粒子の拡散挙動および乱流の変化の様子を調べる。粒子拡散の度合いは乱流や粒子の特性時間や特性長さに基づく方法で整理することで、特に現象を支配するスケールを明らかにする。また特に粒子自身が乱流に及ぼす影響を考慮することが粒子拡散挙動にどのように影響するかを理解するために、粒子が流体に及ぼす影響を無視したシミュレーションを併せて実施し、結果を比較する。 最終年度である次年度は、工学的応用を意図して、背後の乱流構造の非等方性が粒子拡散に与える影響をシミュレーションによって明らかにする。ここでは時空間的な平均流れが等方的ではなく、サインカーブで与えられるような流れ場を与える。背後の流れの平均構造と粒子分布や速度等の相関を調べることにより、非等方な粒子拡散のモデルを与えるための指針を得る。ここまでで明らかにした結果に基づいて乱流中の粒子拡散モデルを提案し、粗い計算を行って詳細なシミュレーションと結果を比較することで、粒子拡散モデルの妥当性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は国際会議2回(ICMF2019:リオデジャネイロ、AJK2019:サンフランシスコ)を予定しており(450000×2=900000円)、その費用の一部を次年度使用額で充当する。 残りは数回の国内会議や大阪大学との打合せにかかる旅費・参加費や、書籍購入に充てる予定である。
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