研究課題
最終年度(令和元年度)では,生体模擬溶液に対する光の干渉効果について,理論と実験より解析した.干渉散乱理論による散乱係数の理論値と光計測と逆解析による算出値との定性的な一致を示すことができた.体積分率が高い場合,光の干渉効果が散乱係数に影響を及ぼすことを明らかとした.また,これまでに使用していたCartignyらによる干渉散乱理論では,粒径分布を考慮できなかったため,Maxwell方程式と等価であるFoldy-Lax方程式より厳密に多分散系の干渉散乱理論を構築した(Michigan大学のLeung Tsang教授の研究室に滞在した際に実施).構築した理論を用いた解析より分散性が強く影響する条件を明らかにした.次に,ふく射輸送における光の前方散乱性が強く影響を及ぼす時空間スケールをδ-Eddington近似より数値解析した.光学特性値の関数として普遍的に時空間スケールを評価することができた.最後に,ふく射輸送方程式を電磁波の波動方程式より出発し,理論的に導出することで,ふく射輸送方程式に含まれる電磁波散乱の素過程について考察した.研究期間全体の成果としては次の3項目である:1)位相関数を再規格化することで,ふく射輸送方程式の精度と効率の両立した数値計算手法を開発した.2)干渉散乱理論と光計測より,光の干渉効果が及ぼす散乱係数への影響について明らかにした.3)δ-Eddington近似より,光の前方散乱性が主体となる時空間スケールを明らかにした.研究計画では,球状散乱体に対する解析の後に,高分子溶液における構造因子を分子動力学法より計算することとしていたが,球状散乱体に対する解析で予想よりも豊かな知見が得られたため,実施するには至らなかった.今後の課題としたい.
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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