研究課題/領域番号 |
18K13696
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 信 東北大学, 工学研究科, 助教 (60706836)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シリカエアロゲル / フォトニック構造 / フォトニックバンドギャップ / 低熱伝導率 |
研究実績の概要 |
本研究では太陽エネルギーなど熱ふく射光の高効率変換技術を実現するために重要な高温における熱輻射スペクトル制御技術の開発を目的としてシリカエアロゲルを用いた多層膜フォトニック構造を実現することによる新しい熱伝達制御技術の確立を目指している。 平成30年度は光学シミュレーションを用いた高屈折率膜の材料選定および膜厚最適化を進めると共に、多層膜フォトニック構造の実現のために重要となる数百nmオーダーのシリカエアロゲル薄膜の作製を目標として研究を実施した。多層膜フォトニック構造を用いることでフォトニックバンドギャップにおいて輻射熱伝達をほぼゼロにすることができる。フォトニックバンドギャップ帯域は構成される材料の屈折率差に依存するため、低屈折材料であるシリカエアロゲルの相手材料はできる限り高屈折率である必要がある。シリコンおよびβ-鉄シリサイドを試した結果シリコンを用いた場合に広帯域なフォトニックバンドギャップが得られ、良好な熱輻射スペクトル制御が可能であることがわかった。これは高い屈折率の実部と低い屈折率の虚部を有することに起因している。 シリカエアロゲルはシリケートの架橋構造を含むゲルを超臨界乾燥させ作製した。TEOSをアルコール溶媒中に分散させ、触媒を入れることで架橋が開始しゲル粘度が上昇する。ゲル粘度を調整して気泡密度および膜厚を最適化し、目的の膜厚を有するシリカエアロゲル薄膜を作製することができた。更に作製したシリカエアロゲル上にスパッタでシリコン薄膜を形成した後、もう1層のシリカエアロゲル薄膜層の形成を行った。作製試料は想定通りのフォトニックバンドギャップを示しており、本研究で目的とするシリカエアロゲル多層膜フォトニック構造の実現に大きく近づくことができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度はシリカエアロゲルを用いた多層膜フォトニック構造の設計とシリカエアロゲル薄膜の作製が目標であった。電磁界法に基づく数値シミュレーションを用いて目的とする熱ふく射スペクトル制御特性を有する材料および構造設計を行い、最適構造を実現することができた。またゲル粘度の調整およびスピンコーティングを用いた塗布方法の最適化によって目的とする膜厚を有するシリカエアロゲル薄膜を作製することができた。 大面積作製および作製の簡便化のための超臨界乾燥法を用いない作製方法は試みたものの、超臨界乾燥で作製したものに比べて気泡密度が低い、均一な薄膜にならないという問題点があり、次年度以降も方法の検討が必要である。 以上の実績を鑑みて今年度の進捗状況は上記の通り評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度確立したシリカエアロゲル薄膜作製手法を用いて3周期以上の多層膜フォトニック構造の作製を行う。また、作製したフォトニック構造の熱放射特性を精確に評価するため、試料加熱型の熱放射スペクトル測定装置を作製し評価を行う。太陽熱利用システム等への応用を考えた場合、放射角度による熱放射特性の評価は重要であるため、本装置では熱放射特性の角度依存性評価を可能とする機構を取り入れる予定である。また作製した多層膜フォトニック構造における面垂直方向の熱伝導率測定によって表面からの熱伝達量の定量評価を可能とし、本構造を用いた超断熱スペクトル制御技術に基づく熱伝達制御技術の確立を目指す。
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