本研究では太陽エネルギーなど熱ふく射光の高効率変換技術を実現するために重要な高温における熱輻射スペクトル制御技術の開発を目的としてシリカエアロゲルを用いた多層膜フォトニック構造を実現することによる新しい熱伝達制御技術の確立を目指している。 2019年度はシリカエアロゲル薄膜を用いた多層膜フォトニック構造の作製を行い、高温熱放射特性の評価を行った。これにより、従来のシリカ/シリコン多層膜フォトニック構造よりも広帯域なフォトニックバンドギャップ構造を有する材料の実現に成功したと考えている。また、高温での熱放射特性測定の結果より、約600℃までは材料特性の大幅な劣化がなくフォトニックバンドギャップにおける高い反射率を示すことが明らかとなった。また高温における熱放射特性の角度依存性についても詳細の評価を行い、シミュレーション同様の小さなバンドギャップ帯のシフトのみ生じることがわかった。さらに、本多層膜構造を高融点金属基板上へ形成することで高温においてもフォトニックバンドギャップの存在する赤外熱放射の波長帯において非常に低い熱放射の実現が可能な材料を実現できることが明らかとなった。これによって熱光起電力発電といった、高温において特定の波長域における熱放射の抑制が必要となるエネルギー変換システムの大幅な効率向上が期待できる熱放射材料の実現が可能となる。また、今回、作成したシリカエアロゲルの気孔率は70%以上と非常に高いことから、多層膜構造最表面への熱伝導が小さくなり、大気中であっても材料表面からの伝導、対流伝熱の小さい、ふく射伝熱を主体とする放熱材料の実現が可能となり、熱放射特性の制御によって熱輸送特性を大きく制御可能となり、新たな熱輸送制御材料への応用が期待される。
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