二次元の不均一固体系における分子動力学シミュレーションを構築した.これは,三次元に比べて計算負荷が軽いため大規模化が容易で,なおかつ振動モードの可視化が容易であるためである.特に簡単のため,原子ごとに質量差を与えることによって不均一系を構築した.ここで,不均一な系としてはこれまで質量差のものとアモルファス構造のものは同一であることが知られている. 構築した分子動力学法によるシミュレーションと従来から主に純結晶に対して用いられている手法(Normal Mode Decomposition法)を用いて,無数に存在する格子振動モードごとのエネルギーの時間発展を逐一計算する枠組みを構築した.この手法では,格子動力学法によって格子振動の固有値及び固有ベクトルを得,それ等を用いて分子動力学法によって得られた分子の速度と変位を射影することによって,モードごとに分解されたエネルギーを得ることができる.さらに,得られたエネルギーの相関を計算することで,格子振動モード間のエネルギーの相関の強さを得ることに成功した.一方で,計算時間が十分でないため,まだ定量的な評価にまでは至っていない. また,格子動力学法を用い格子振動モードの挙動を求めることで,不均一系において格子振動モードの一部が局在化することを可視化し確認した.特に,周波数が高いほど局在化の度合いが強くなる傾向を確認した.これによって,振動モードの相関と,モードの局在性の強さがどのようになるかを定量的に評価する枠組みを完成することができた.
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