本研究の目的は,多孔質体の伝熱で広く採用される2エネルギーモデルにおいて,ビオ数が大きい(熱伝導率が低い)場合には,伝熱量の見積もりができないことを問題提議とし,高ビオ数に適用できる非定常多孔質体伝熱モデルを提案することである.構造体内の熱伝導を加味して多孔質体構造における熱抵抗の非定常性を検討することで,従来モデルでは表現できない構造体表面からの伝熱量の見積もりを実現させる.さらに,本研究では,従来モデルと本モデルの伝熱予測精度を定量評価するだけでなく,基本的な多孔質体構造においてビオ数に基づいたモデル定数のデータベースを作成していく. 最終年度を終えた大きな研究実績としては,研究開始当初に予定していた上記の研究計画をほぼ達成したことである.ただし,従来モデルと本研究で提案した伝熱モデルにおける伝熱精度の定量評価に関しては,新型コロナウイルスのために研究室の出入りが制限されたため,実験を完遂することができず,その代わりに数値解析により定量評価を行った.研究開始当初は,ビオ数に応じて伝熱モデルの変更が必要と考えていたが,ビオ数とフーリエ数の関数で構造体内の熱伝導の定常性をモデル化したことで,当初よりシンプルなデータベース化を実現した.データベースには平板,直方体,円柱,球からなる多孔質構造のモデル定数を集約した. 令和2年度までにおける研究成果は第57回日本伝熱シンポジウムで発表し,非定常多孔質体伝熱モデルの原案に関しては熱工学コンファレンス2020で発表した.また,従来モデルとの伝熱精度の定量評価に関してはThe 8th Asian Symposium on Computational Heat Transfer and Fluid Flowで公表する予定であり,データベース化を含めた研究総括はJournal of Porous Mediaに投稿する予定である.
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