研究課題/領域番号 |
18K13702
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 崇弘 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90711630)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / 多孔質電極 / 電極スラリー / 乾燥プロセス / 粒子輸送 |
研究実績の概要 |
固体高分子形燃料電池の電極構造形成において,材料を分散したスラリーを塗布・乾燥する過程における物質輸送現象を明らかにし,形成される構造を推定する方法論を確立するための研究を行った.今年度は主に以下の四つの成果が得られた. (I)マイクロ電極チップを用いた抵抗計測とレーザー変位計による液面変位計測を同時に実施可能な計測システムを構築し,粒子挙動と溶媒蒸発の統合的な評価が可能となった.乾燥条件やスラリーの含む粒子種を変えて計測を実施し,これらが乾燥挙動及び粒子挙動に及ぼす影響を明らかにした.特に,密度の異なる粒子を用いた計測では,低密度粒子(触媒非担持カーボンブラック)において粒子が乾燥表面側に片寄る一方,高密度粒子(触媒担持カーボンブラック)では粒子の沈降が乾燥に先行して進む様子を捉えることに成功した. (II)移流拡散方程式に基づくスラリー乾燥過程の粒子分布形成挙動のモデル化を行い,(I)の実験と物性を合わせ込んでシミュレーションを実施した.この結果,実験とシミュレーションで粒子挙動が定性的な一致を示した. 以上のように,当該年度において本研究で目的とする電極構造推定に必要となる実験手法とシミュレーション手法の準備を整えることが出来た.更に,計画を前倒し,追加する形で以下の成果を得た. (III)粒径分布,ゼータ電位及びレオロジーの既存計測技術の応用に加えて,インピーダンス計測に基づく電気的応答から評価する方法を提案し,各種計測の統合的解析に向けた基礎的検討を進めた. (IV)電極内の材料階調分布構造を形成するために,スプレー塗布による高分子電解質の多孔質電極への充填手法を開発した.スプレー吐出と乾燥雰囲気を制御することで,多孔質電極内に高分子電解質の階調分布構造を形成することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で目的とする電極構造推定手法確立のために必要となる実験手法とシミュレーション手法について,当初の計画の通り準備を整えることが出来た.また,計画を前倒しして,電極スラリーの評価・解析を開始した.加えて,当初の計画では予定していなかった発展的内容として,電極構造の積極的な制御に向けて,スプレー法を用いた高分子電解質の多孔質電極内階調構造の形成手法を提案し,実証することが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,整備した実験手法とシミュレーション手法を用いて電極構造を推定する手法を確立するための研究を行う.用いる電極スラリー及び乾燥プロセスの条件を設定し,実験と解析を進める.また,電極スラリーの評価・解析や電極構造解析と併せて,提案手法の妥当性検証を行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
共用施設における年度末分の機器使用料の請求が翌年度となるため,確保していた助成金の繰越が生じた.発生した次年度使用額は全て年度末及び次年度の機器使用料に充当する.
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