研究課題/領域番号 |
18K13707
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
木伏 理沙子 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 助教 (30781596)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パワー半導体 / SiC / ホットスポット |
研究実績の概要 |
本研究では、SiCパワー半導体デバイスの高信頼性を実現するためのマルチスケール・サーマルモデルの構築を目指す。SiCパワー半導体デバイスの信頼性を確保するためには、微小範囲で非常に高温に達するSiCパワー半導体ダイ内部に発生するナノ・マイクロスケールホットスポットにおける破損を防ぐ必要がある。このナノ・マイクロスケールのホットスポット温度を正確に予測するためには、ミクロな観点でダイにおける発熱を推定(発熱分布の特定)するとともに、その半導体ダイから、様々な部品を介して外気までの熱移動を考慮しなければならない。本研究では、半導体ダイから外気までの主な伝熱経路を予測するため、マクロスケールにおける伝熱を考慮するため実測による熱移動経路の予測結果とCFD(Computational Fluid Dynamics)を併用することで、半導体パッケージ内部の熱移動経路を予測し、発熱量と各経路への熱移動量を取得するためのデータベースを構築する。一方、ミクロ的な発熱を推定するために、熱・電気連成解析を用いてダイ内部の伝熱特性の評価を行い、これらを統合することでマクロおよびミクロの伝熱を考慮した、ホットスポット温度予測手法を構築することを大目的としている。マクロスケールの伝熱試験では、冷却器を搭載していない状態において発熱量をパラメータとしたチップの表面計測を実施した。その中で計測対象が微小であるために、熱電対の設置が困難であることと設置された熱電対への伝熱により、実験の測定される温度のばらつきがみられている。また、本実験とCFD解析の併用により、半導体デバイス内部温度分布の取得を目指しており、CFD解析において印可された電圧と電流から推定される発熱量としたが、実験で計測される温度域とは異なる結果が示されているため、この原因を追求している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マクロスケールの伝熱試験では、冷却器を搭載していない状態において発熱量をパラメータとしたチップの表面計測を実施している。前年度における伝熱実験においては、パワーSiC半導体チップ内の伝熱状態が冷却器の性能に左右されないため、冷却器を搭載しておらず、発熱量の上限が非常に肉炒めに、発熱量をパラメータとした実験の実施が困難であった。そこで本年度は分解能が高い電源を搭載することで、パラメータ数を増加させることができた。対象となる半導体デバイスが非常に微小であるため、熱電対の設置が非常に困難であり、設置方法を再検討する必要があると考えている。さらに、本年度は本試験の測定可能限界と考えられる細さの極細熱電対を採用したものの、計測対象から熱電対への伝熱により測定される温度がバラついていることが課題となる。CFD解析においては、実測での電圧と電流を採用して発熱量を決定しているが、CFD解析から得られた温度分布の温度と実測値が乖離しているため、CFD解析および実測での測定結果の両面から再検討が必要であることが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、伝熱試験における測定方法の改善することで再試験を行い、改善された試験結果とCFD解析の結果の比較を行い、発熱体から外気までの伝熱経路について伝熱割合の特定を目指す。伝熱測定の改善については、熱電対の設置方法を改善することとし、統一されたサイズのカプトンテープを等間隔に設置することと、最小限のサイズまで抑えることで、表面から外気への放熱状態への影響を抑制する。CFD解析については、表面におけるメッシュ構造の再検討や、解析モデルの再構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、コロナ渦により大学での研究実施ができない期間があり、実験にて利用を予定していた物品購入を見送りや、旅費等が発生しなかったため。
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