研究課題
本研究では,アトピー性皮膚炎に対する紫外線療法について,詳細な作用機序を明らかとし,治療の有効性について皮膚の物性計測からの検討をアプローチするものである.人の皮膚内部での紫外線波長域における散乱や吸収を決定づける光物性の計測については,非侵襲での計測データがない中でこれまでの治療法の検討が行われてきた.紫外線療法では,様々な波長での治療が試みられているため,この治療法で用いられているものと対応した,幅広く,かつ,非侵襲で皮膚の光物性を計測できる計測装置の開発が必要であった.そこで,本研究では,この紫外線波長域に対応した光物性計測装置の開発を行った.ここで開発した紫外線波長に対応した光物性計測装置を用いて,試験的に10名の日本人の皮膚について,光物性の計測を実施した.紫外線療法では,治療する部位によって,治療成果が異なるとの報告もあったことから,体の部位による光物性の違いを調査するために,手,首,腕の3箇所の計測を行い比較した.その結果,非侵襲での紫外線波長における皮膚の光物性の計測データを得ることに成功するとともに,体の部位による光物性の違いを示した.また,この光物性の計測と並行し,紫外線が皮膚内部でどのように伝播し,作用(吸収)されるかを詳細に分析するために,光線治療に対応した光伝播シミュレーションのモデル構築を行った.これまで可視光・近赤外線波長域での人の皮膚の計測の経験に基づくと,人の皮膚の光物性がどのような数値を持っているか,その標準偏差(個人差によるバラツキ)となるデータを示すためには,さらに計測人数を増加させる必要がある.現在,大規模での計測を実行するための準備を進めており,計測可能な環境を整え次第,計測を実施する予定である.この実験を実施後,本研究で開発した光伝播シミュレーションモデルを用いて,紫外線療法の効果と,皮膚の光物性との関係性を明らかにしていく.
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Proceedings of the 9th International Symposium on Radiative Transfer, RAD-19
巻: 1 ページ: 179-186
10.1615/RAD-19.220
International Journal of Thermophysics
巻: 40 ページ: 1-14
10.1007/s10765-019-2515-3