研究実績の概要 |
本研究では,まず,確率密度関数の裾の重さを特徴づける尖度と,パワースペクトルの帯域幅および卓越振動数,さらに振幅非定常性を実世界に見られる様々なケースに柔軟に調節することのできる非定常非ガウス性不規則励振モデルを開発した.次に,その励振モデルを入力とする1自由度振動系に対し,研究代表者が以前に開発した応答の統計量解析法と確率分布解析法を発展させ,応答の確率密度関数と統計量を求める解析手法を開発した.励振についての複数の解析条件(尖度, 帯域幅, 卓越振動数,振幅非定常性)を設定し,解析手法の結果とモンテカルロ・シミュレーションの結果を比較することで,幅広い非ガウス性励振に対して,この解析手法の有効性を確認した.以上の解析手法開発が完了した後,1自由度線形系を対象として,励振モデルの尖度,帯域幅,卓越振動数の3つを広い範囲で変化させながら,開発した応答解析手法を用いて,応答の確率密度関数と統計量を求めた.その結果をもとに,1) 励振の尖度が応答に与える具体的な影響と,2) その影響度合いが帯域幅・卓越振動数の変化によりどのように変化するか,という2点を調査した. 令和3年度は,前年度までに行ってきた上記の研究成果を取りまとめ,学術誌への論文投稿ならびに学会での発表を行い,本研究成果の発信を行った. 今後の研究の展開として,本研究を通して明らかとなった狭帯域非ガウス性不規則励振を受ける系の応答特性に関する知見を踏まえた,系の信頼性評価手法の開発が挙げられる.これが達成されることで,工学諸分野に見られる非ガウス性励振下の系の信頼性をより精緻に評価できるようになるため,関連する機械・構造物の一層の高信頼性化の実現に貢献できると考える.
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