研究課題/領域番号 |
18K13714
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藪井 将太 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (90800756)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 磁気ディスク装置 / 振動制御 / 適応制御 / 位置決め制御 |
研究実績の概要 |
2018年度は磁気ディスク装置の磁気ヘッド位置決め制御系において,流体起因振動に着目した新たな振動制御系を提案した.流体起因振動は磁気ディスク装置で発生する代表的な振動である.近年,流体起因振動を低減するためにヘリウム封入型磁気ディスク装置が開発されているが,長期的な稼働においてヘリウム漏れによる流体起因振動の増大が懸念される.ヘリウム漏れにより流体起因振動が増大した場合,磁気ディスク装置の故障や,磁気ヘッドの動作量が増えることによる消費電力の増大が考えられる.提案する制御手法は,ヘリウム漏れを考慮して,リアルタイムで制御系の特性を更新し,従来法と比較して磁気ヘッド位置決め制御系の性能を向上できる.また,そのとき得られた制御パラメータから,磁気ディスクの状態,つまりヘリウム漏れ量を推定することも可能にする.このパラメータを監視することで,故障予知,および磁気ディスクの交換のタイミングを適切に判断できる.無駄のない磁気ディスク装置の交換は消費電力を最小化し,グリーンITにも貢献できると考えられる.本提案について,電気学会の精密サーボ関連の研究会にて1件の講演を行い,国際英文誌 Microsystem technologies に1件投稿した.こちらの投稿論文については既に accept をいただいており,掲載待ちの状態である.当研究の大きな目的であるデータサーバで発生する外部振動の補償方式については,基本的な設計指針を固めたところである.また,実環境を想定した実験装置によりデータ取得が可能になったため,有効性の検証を実施できる環境を構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁気ディスク装置において代表的な振動問題に対し,新たな制御手法を考案し,有効性を確認できた.この成果物により,データサーバにおける磁気ディスク装置の故障のリスクを低減し,また無駄な電力消費量を抑えることができる.こちらの内容については,1件の国内講演,1件の英文誌から accept を頂いており,外部機関からの評価も得られている.こちらの内容については当初の計画以上に進展した. 一方で,データサーバで発生する代表的な外部振動については,本年度は検討段階で終了した. よって,全体を鑑みると「(2)おおむね順調に進展している.」という評価が妥当だと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度はデータサーバで発生する外部振動を補償する制御方式を考案し,位置決め制御系の改善,および消費電力の低減について取り組んでいく.データサーバを模擬した実験システムにより,外部振動のデータを取得できるようになっているため,具体的な制御方式の考案,および有効性の検証を実施していく. 基本的な制御系の設計指針は固まりつつあるので,実験データを用いた有効性を検証しながら詳細を詰めていく. それらの成果物をまとめ,1件の国内会議,1件の国際会議,そして1件の英文誌に投稿予定である.
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