研究課題/領域番号 |
18K13715
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
松原 真己 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40736427)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機械力学・制御 / 構造・機能材料 |
研究実績の概要 |
本研究は,微粒子が複合化されることで起こる粘弾性材料のエネルギー散逸機構の解明と,その巨視的な性質として現れる減衰特性と配合条件の関係を解明を目的としている.微粒子複合化粘弾性材料の高分解能のX線CT画像を取得,内部ひずみを評価することによりエネルギー散逸機構を明らかにするものである.平成29年度ではPET粒子の複合ゴムを対象に,以下のような成果が得られた. (1)X線CT像より,3次元画像を再構成し,微粒子および粘弾性材料の挙動観察を行った.引張荷重時,シート成型時の圧延方向に対して横方向に圧縮し,厚み方向には圧縮が発生しないことを確認した.これはPET粒子がシート成型時の流動によって厚み方向に繊維が巻き込まれているためであると考えられる.この点については継続して調査を行う. (2)0°配向繊維状微粒子複合化天然ゴムに対して引張荷重を与えることで繊維状微粒子の端にボイドが発生することを観察した.ボイドの発生と成長が観察されたことによって,0°方向では母材微粒子間ですべりが発生している可能性がある.一方,90°配向ではすべり発生が確認されなかった.以上から,微粒子複合化した際における損失係数のひずみ振幅依存性には界面すべりが大きく影響していることが示された. (3)X線CT像に特徴点追跡法を適用することにより荷重付与時の試験片において発生する3次元ひずみ分布を観察した.ひずみは特徴点から4面体要素を構成し,荷重付与前後の変形から算出を行った.その結果,0°配向ではひずみが局所的に大きくなっている部分が存在するが,90°配向においては全体的にひずみが分布している傾向にあることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記の3点について2018年度実施計画として申請した. <1.分子構造の破壊の有無>加硫反応後のゴムをGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)分析をすることが困難であったため,代替試験として,①動的粘弾性試験の複数回実施,②昆練り時に消費されるエネルギー違いによる試験片の作成を行った.①では微小振動による分子構造の破壊,②では大きな塑性変形を加えることによって分子構造の破壊が誘発されれば,平均分子量が変化し,最終的に動的粘弾性特性が変化すると考えられる.その結果,微粒子複合化による粘弾性特性変化に対して①②の影響は小さいことを確認した. <2.粒子界面の剥離・すべりの有無>X線CT像から粒子界面の空孔の個数が荷重付与によって増加することは確認できたものの,界面におけるすべりが発生しているかは取得画像からは判断できなかった.これは計測分解能と粒子の大きさの関係に依存しているため,次年度は粒子サイズを大きくして再度観察する予定である. <3.局所的なひずみの発生の有無>取得したX線CT像を3次元画像として再構築し,画像上に現れる輝度の高い点(不純物もしくは加硫反応用の酸化亜鉛)を荷重付与前後で追跡することで,ひずみ分布の算出を行った.その結果,引張方向と繊維配向が一致している場合には局所的に大きいひずみが現れるが,垂直の場合には一様なひずみ分布になることを確認した. 以上のように一部継続的に検証すべき事項はあるものの,概ね計画通りに進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
申請書記載の計画通り実施する. 1.巨視的な動的ひずみ分布と減衰特性の関係解明 本学の別研究室が保有するサーボパルサ(島津製作所,MMT-11NB-2)を借用した.この装置に画像計測装置を組み込むことで,ミリオーダーの大きさの構造体を対象とした動的ひずみ分布(表面)の計測を可能にする. 2.配合条件と減衰特性の関係 配合条件の異なる制振材の製作し,SPring-8におけるX線CT像の撮影,動的ひずみ分布の計測,動的粘弾性試験等の実験を実施する.それにより,減衰特性発現メカニズムを解明する.
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