提案するソフトチューブ埋込方式によるワイヤ駆動柔軟舌機構のための変形モデル構築用試作機の変形形状を,より精緻に計測できる実験環境を構築した.これは2次元レーザ変位計を用いて,十数ミリ秒周期での計測を可能とするものである. 再現対象であるヒト舌は,収縮・湾曲運動のみならず,伸長運動も行っている.これまでに剛体ないしは曲げ方向には柔軟であるが引張・圧縮の両方向の力を負荷できる機素(例えばフレキシブルチューブ)を用いて湾曲・伸縮運動が可能な機構は数多く提案されてきたが,ワイヤのように引張方向にのみ力を負荷でき,圧縮方向には力を負荷できない機素を用いた伸縮運動が可能な機構は提案されていなかった.そこで剛体5節リンク機構に着想のヒントを得て,局所部分の曲げ剛性を小さくした柔軟な弾性体リンクと,提案するソフトチューブ埋込方式によるワイヤ駆動機構を組み合わせた,柔軟伸縮機構を開発した.柔軟舌機構への応用の際には,前年度までに開発された収縮・湾曲機構と組み合わせて構成されなければならないので,柔軟弾性体リンク機構の内側を,さらに柔らかな材料で満たさなければならない.しかし,この構成では柔軟弾性体リンク機構の変形の程度が,着想の元となった剛体5節リンク機構のそれよりも小さくなってしまうことが明らかになった.そこで,その内側材料の柔らかさを変えた試作を多く製作し,この機構に適した材料の柔らかさを決定した.また,伸縮性に優れた薄布を柔軟部品中に埋め込むことで,耐久性に優れた柔軟部品と駆動ワイヤとの締結方法を確立した.
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