本研究では,流体層と剛体層から成る二層構造流体指内部にテクスチャ構造を付すことで,流体指のさらなる把持性能の向上を目指して研究を行った.どのようなテクスチャ構造がどのように把持性能の向上に効果があるかを明らかにし,タスクに応じた最適な二層構造流体指の設計へと応用することを目的としている. 令和元年度には,把持耐力という指標に着目をして検証を行った.テクスチャ構造が把持に影響を与える要因として,テクスチャパターンの寸法(高さ,ピッチ等),断面形状,パターンの向きといった設計パラメータが考えられ,基本的な断面形状として直角三角形,二等辺三角形,半円形の テクスチャ構造を用意しテクスチャパターンのない場合との比較を行った.令和2年度は,テクスチャ構造指で期待される機能の1つである圧力分散について検証を行った.まず,圧力分散の検証を行う前に,前年度に開発した指の問題点を修正した新たな構造の指の開発を行った.前年度の指は,圧力分散の測定を行うにはサイズが大きく接触面の圧力が測定しにくい,テクスチャ構造やゴム膜の交換が難しいという問題があった.そこで,内部のテクスチャ構造部を光造形3Dプリンターで作成し,テクスチャ構造部やゴム膜を交換しやすくした新たな構造の指を開発した.次に,指が接触したときの圧力分布や接触面の状態を測定するために,プレスケールシートやカメラを用いた圧力分布測定用の実験装置を製作した.測定後の画像処理時に自動で傾き補正できるように,プレスケールシートにマークを付けながら固定する治具を開発した.測定した結果を画像処理し,前年と同様のパターン間や内圧間での圧力分布の違いについて比較を行った.パターン間の比較では,予想通り曲率の高くピッチが狭いパターンの方が圧力が分散していた.また,内圧を高くしていくほど圧力が分散していく傾向がみられた.
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