研究課題
本研究は、「脳膜・脳血管・脳実質モデルを組み込んだ脳裂開放手術ハプティックシミュレータ」を開発することを目的とする。実現するために、これまで、脳実質や脳血管について変形や損傷破壊の数値計算モデルを開発した。本年度は以下の研究を実施した。1.提案した脳血管の非線形的な損傷破壊数値計算モデルをくも膜小柱に応用した。脳血管温存技術においては、くも膜下腔構造のメインな部分であるくも膜小柱の対処が術技成功の鍵である。脳血管に加えて、くも膜小柱の損傷破壊数値計算モデルを構築することで、くも膜下腔構造を考慮した血管の温存シミュレーションを行うことができた。(業績【雑誌論文】1)2.くも膜下腔構造を考慮した血管の温存シミュレーションを様々な条件(例えば、くも膜の引張速度、引張ひずみなど)で行い、脳血管の損傷破壊状況を調べた。これによって、脳血管温存の成功条件を探り出した。(業績【雑誌論文】1)3.構築したシミュレーションの結果をニューロナビゲーションなどに応用するため、複合現実(Mixed Reality)システムを構築した。脳神経外科手術の内視鏡手術を想定した。内視鏡や術具の位置姿勢をモーションキャプチャーシステムで追跡し、術具と柔軟体との相互作用をシミュレーションで同時に計算し、内視鏡の画像にシミュレーションの結果を重なることで実際の内視鏡手術で見えないところに損傷が発生することを防げることを期待する。
2: おおむね順調に進展している
昨年度まではくも膜下腔構造を考慮した非線形的な脳血管の損傷破壊数値計算モデルを構築した。今年度では脳血管温存術技においてもう一つ重要な生体組織であるくも膜小柱に対して、非線形的な損傷破壊数値計算モデルを適用し、くも膜下腔を考慮した血管の温存シミュレーションを構築した。これで、「脳膜・脳血管・脳実質モデルを組み込んだ脳裂開放手術ハプティックシミュレータ」の核心的な部分である数値計算モデルの構築が完了した。この研究成果は1件の学術雑誌論文が掲載された。また、当初予定しなかった複合現実(MR)システムを構築した。以上により、研究はおおむねに順調に進展していると評価する。
最終年度となる2021年度は、これまで開発してきた数値計算モデルを応用し、脳膜・脳血管・脳実質モデルを組み込んだ脳裂開放手術シミュレーションを構築する。また、ハプティックデバイスを用いて、シミュレーションで計算した反力を感じさせるシステムを構築する。これで、本研究のテーマである「脳膜・脳血管・脳実質モデルを組み込んだ脳裂開放手術ハプティックシミュレータ」が完成する。ユーザがこのシミュレータを用いて、脳裂開放術技を体験できることを目標にする。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
IEEE Transactions on Medical Robotics and Bionics
巻: 2 ページ: 356~363
10.1109/TMRB.2020.3009521
SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration
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Surgical Endoscopy
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日本バーチャルリアリティ学会論文誌
巻: 25 ページ: 366~373
10.18974/tvrsj.25.4_366