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2018 年度 実施状況報告書

医療機器のための遠隔精密バイラテラル制御の研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K13725
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

菅野 貴皓  東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (50714234)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワードバイラテラル制御 / 手術支援ロボット / 通信遅延 / 波変数 / LSTM
研究実績の概要

計算機ネットワークを介したマスタ・スレーブ方式の遠隔操作ロボットは遠隔手術などの応用が期待されている.マスタ・スレーブは,ユーザがマスタアームを持って手を動かすと,遠隔地にあるスレーブアームがマスタアームと同じ動きをする方式であり,直感的なロボット操縦が可能である.マスタ・スレーブロボットにおいて,操作者に力情報をフィードバックするバイラテラル制御は,制御の安定性を保証することとロボットアームの追従性を両立する制御技術が長年の課題となっている.
本研究では,波変数に基づくバイラテラル制御を適用する.この制御手法は,マスタとスレーブとの間の情報伝達にエネルギーに関連する変数を用いる制御方式であり,任意の長さの時間遅れに対して制御の安定性を保証することができる.しかしながら,波変数に基づく制御は追従性に課題があり,操作者がマスタを止めても遠隔地のスレーブアームが振動するといった課題がある.
そこで,本年度は,機械学習を利用して操作者の手の動きを予測することで,波変数に基づく制御の追従性を向上させることを図った.操作者が手を動かした際の軌道データを記録して学習させ,それを元にして100ミリ秒先の手先位置を予測する.学習には,時系列データの処理に優れるLong short term memory (LSTM)を用いる.LSTMは,従来の再帰ニューラルネットワークに対して,長いデータに対応できるように内部にメモリユニットと呼ばれる構造を持たせるように改良されたものである.また,ロボットの制御周期は1ミリ秒であるが,LSTMの特性に合わせて予測のサンプリング周期は50ミリ秒に設定した.
実験により,提案する手法を用いて誤差0.5mm程度で軌道を予測できることを確認した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当年度は,波変数に基づくロボット遠隔制御において,振動やオーバーシュートを抑制することを目標としていた.当初は,マスタ側に停止位置予測アルゴリズム,スレーブ側にオーバーシュート抑制フィルタを導入する計画であったが,LSTMを用いて軌道そのものを予測し,時間遅れの影響そのものを低減することができている.
制御系については,MATLABを用いたシミュレーションにより動作を確認し,さらに空気圧シリンダを用いた制御実験専用の単軸ロボットを試作して実装を行っている.
制御理論の面では,エネルギー収支モニタと呼ばれる手法を用いて,空気圧駆動システムにおけるバイラテラル制御が不安定になることを数値シミュレーションにより確認しており,これについては新たな課題として次年度は理論的に検討することを予定している.

今後の研究の推進方策

当年度の研究により,空気圧と波変数を組み合わせたバイラテラル制御が不安定になることが明らかとなったため,この課題を解決する制御理論の構築を行う予定である.
また,遠隔手術ロボットの「クラウド化」を目指し,任意地点にいる医師とロボットを自在に接続できるオンライン遠隔協調手術システムのを試作する.担当医の自動選択機能を含む基礎的なソフトウェア・アーキテクチャの検討を行い,ソフトウェアを試作する.担当医はAI(機械学習や最適化計算等)により選択を行うが,これらの技術が十分でないと判断した場合は,手動での割当を行うソフトウェアを作成し,将来の自動化に必要なデータ収集を行う.
さらに,実際の遠隔手術における様々な課題の洗い出しを行い,制御理論の面から解決が可能なものについては本研究において対処する.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 波変数に基づくバイラテラル制御における機械学習を用いた遅れ補償2019

    • 著者名/発表者名
      井上裕矢
    • 学会等名
      日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2019

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公開日: 2019-12-27  

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