これまで医療技術が発達してきたが,事故や病気などの後遺症として,麻痺などが残ることがある.また,パーキンソン病によって,手に震え(振戦)が生じることがある.そこで本研究では,このような患者に,介助者の代わって動作支援を行い,食事動作などを補助することを目的とし,2つの動作補助ロボットアームを開発した. まず提案したのは,受動関節を有した5自由度を有するロボットアームである.同アームでは,受動関節が回転することで人が機構の出力点に直接位置入力をし,同入力をもとに位置制御を行うアクチュエータを用いて動作軌跡への位置決めを行う.同アームは3つのアクチュエータを備えており,これらで手先空間位置を補正する.動作中は目標軌跡方向およびアーム姿勢に合わせアクチュエータの励磁を切り替え,駆動関節と受動関節を切り替えながら動作する.以上の原理により人と協調動作しながら,空間内での軌跡や平面への補助動作を可能にする. また,前述の装置を応用し,本研究課題である食事支援装置の基礎装置として,前腕の軌跡補助を行う2自由度の装着形パラレルワイヤ式動作補助装置を開発した.機構はベースに設置した2自由度の対偶を介して支柱で連結する出力部を,3本のワイヤの伸縮で2軸周りに回転する.装置の出力部が,あらかじめ設定した目標軌跡上に位置している場合は,全てのモータが受動状態となり,ワイヤは低荷重ばねにより自動的に巻き取られる.しかし,出力部が目標となる軌跡から逸れた場合,3個のモータの中の1個または2個が駆動状態となり,目標軌跡上に出力部を戻す制御が行われる.この状態を随時切り替えることによって,人を主体とした動作補助を可能とする. これらを用いて設定した目標軌跡に対し,人の前腕動作を高精度に補助可能なことが確認されたとともに,振戦を抑制する補助が実現し,食事支援装置としての基礎的手法を確立した.
|