研究課題/領域番号 |
18K13728
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
清水 修 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任助教 (90606287)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機械学習 / 自動車 / 乗り心地 / 制御 |
研究実績の概要 |
昨年度は乗り心地評価を行うためのアクティブシートのハードウェア開発を行った。ハードウェアとしてはアクティブシートに必要なアクチュエータの設計及びそれらを統合するフレームの設計を完了している。アクチュエータはサーボモータとボールねじ、ボールねじに取り付けられたクッションによって構成されている。座面には32本のアクチュエータを配置し、アルミフレームによって支持する構造とした。また電気的なハードウェアの開発も完了しており、それぞれのアクチュエータを独立で制御できるように数μsecで応答可能でかつ、多入力多出力可能なコントローラを採用した。サーボモータの制御はサーボモータ専用のコントローラが1つにつき1つあり、前述のコントローラはそれらを統合するために用いられる。サーボモータとコントローラの動作確認までは完了しているため、今後は統合したシステムとしての検証を行う。本研究の主眼の一つが新たな乗り心地の評価方法の確立であり、アクティブシートのハードウェアの出来が本研究の成否に大きく関わるため、市場で手配可能な安価で摺動性の悪いアクチュエータを用いるのではなく、高価な摺動性の良いアクチュエータを使用することとし、アクチュエータのハードウェアから部品単位で専用設計を行うこととした。 そのため、実施計画において、今年度中に第1回目の評価を行うことを目標としていたが、アクチュエータの入手性(進捗状況に詳細記述)の問題からハードウェア開発にとどまっている。しかし、一方で専用設計としたことによりハードウェアで詳細な仕様として不明になる部分がなくなるため、アクティブシートに何らかの問題があった場合の要因分析や改良を要する場合の対応に係る時間は短くすることができるため、昨年度の遅れは今年度に対応可能であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初使用を予定していた摺動性の良いアセンブリ済みのアクチュエータが生産中止となり、入手不可となったため、アクチュエータの設計が必要となったことによりアクティブシートの設計に当初計画していた時間よりも多くの時間を要した。またアセンブリ済みの製品がないことにより、専用設計、専用部品となったことにより、計画していた予算もアクチュエータの製作費用が多く必要になったため、アクチュエータの本数を減らすことで対応した。さらに工作機械用としてボールねじの世界的な需要増により在庫がなく、発注から納品までも多くの時間を要したことにより、計画よりもやや遅れて研究が推移している。
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今後の研究の推進方策 |
予期していなかったアクチュエータの入手性の課題は専用設計を行うことで技術的には解決したが、研究が遅れて推移しているため、アクティブシートのシステム構築及びシステム評価を早急に進める。今年度予定されていたアクティブシートの改良に関しては昨年度専用設計を行ったため、もし設計変更が必要になった場合も迅速に対応が出来ると考えられるため、今年度は静的評価、動的評価を重点的に行い、機械学習により乗り心地を向上させる方策を探索する。詳細は下記の通り。 静的評価:シート形状による快適性の変化をアンケートにより取得する。圧力分布とアンケート結果を紐づけることにより、ラベル付きの圧力分布データが出来る。このラベル付きデータを機械学習し、パターン認識させることで圧力分布に対する快適性の識別器が出来る。ここで識別器の判断を分析することで、静的な状態での圧力分布と快適性の関連性を明らかにする。 動的評価:アクティブシートが動的な状態でのデータの取得、アクチュエータ制御の可否やハードウェアとしての耐久性の評価を行う。快適性の評価では一定の加減速度時のシート形状(圧力分布)による快適性の変化を、実験参加者を募りアンケートにより取得する。動的な状態では圧力変動があるが、瞬間的な快適性を時系列で正確に答えさせることは困難であると考えるため、ここでは評価値として試験中の圧力分布の平均、最大値、最小値、分散を用いる。さらに識別器の判断を分析することで、一定前後加速中における圧力分布と快適性の関連性を明らかにする。そして静的な評価結果の違いを明らかにする。 制御構築:ここまでに明らかになった快適な圧力分布を実現する制御を構築する。目標とすべき快適な圧力分布は学習データより予め設定しておき、得られた座面圧力からアクチュエータの制御目標を設定し、制御目標を実現するアクチュエータのフィードバック制御を構築する。
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