研究課題/領域番号 |
18K13730
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中原 佐 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (00756968)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | MEMS / MicroTAS / キネシン / 微小管 / 感光性複合材料 |
研究実績の概要 |
該当年度において、本研究では銅と感光性材料(SU-8)を混ぜ合わせた複合材料の加工特性、および光照射に対する温度上昇(光熱効果)の変化量を評価するとともに、生体試料を用いたバイオ応用への展開を試みた。複合材料の加工特性については、20~50μmの規定パターンを有するフォトマスクを用いてフォトリソグラフィによる加工を行い、加工後のパターン寸法値を計測した。その結果、直径約5μmの銅粒子が70wt%となる複合材料を用いたとき、加工できる最小線幅は約25μmであることを確認した。また、あらかじめ作製しておいたマイクロ温度センサの周囲に同条件で調製した複合材料をパターニングし、光照射に対する温度変化を評価した結果、最大約17℃の温度上昇量を計測した。生体試料を用いたバイオ応用への試みとして、複合材料で形成されたマイクロ構造の周囲に生体試料であるキネシンと微小管の運動系を構築し、光を照射したときの運動を観察した。移動する微小管は、照射する光の強度に応じて移動速度が変化する様子を示した。上記の結果より、作製したマイクロ構造は微小管運動の速度制御機構として有用であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度においては、研究計画にて予定していた課題1をおおむね達成し、その成果が得られている。複合材料の加工性および光熱効果の評価については、加工できる最小線幅を明らかにするとともに、照射する励起光の強さによって周囲の温度が上昇することを確認した。微小管運動の制御機構として機能させるマイクロデバイス開発においては、光熱効果によってマイクロ構造周囲の微小管速度が変化する様子を観察した。また、微小管運動の不規則な移動方向をマイクロ構造によって物理的に制御する様子も一部の微小管で観察できた。このような状況から、本研究は次年度に計画している微小管運動による分子輸送システムの構築へと展開でき、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画にて予定していた課題2の達成に向けて研究を遂行する。複合材料で形成されたマイクロ構造を用いて微小管運動の方向制御機構を作製するとともに、速度制御機構との融合によって効率的な輸送システムの構築を図る。また、微小管運動による分子輸送を実証するために、DNA相補結合系を用いた対象分子(Qdot)の輸送技術を確立する。上記の要素技術をオンチップ化し、分子輸送システムとしての有用性を実証するために、微小管運動による輸送効率をQdotの濃縮に伴う輝度値変化から定量的に評価する。また、高い輸送効率を得るために、適宜マイクロ構造の寸法や形状を最適化する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画において設備備品費として計上していた落射蛍光装置の購入が不要となったため、次年度使用額が生じた。翌年度において当該助成金は物品費として使用する計画である。
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