研究課題/領域番号 |
18K13731
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
佐瀬 一弥 東北学院大学, 工学部, 講師 (20805220)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ハプティクス / 力触覚提示 / 有限要素法 / 最適化 / 力覚スキャナ |
研究実績の概要 |
2018年度は研究実施計画に従い,三次元力覚スキャナのハードウェア構築,および,最適化ソフトウェアの基礎検討に取り組んだ. ハードウェアでは,反力測定用の力覚プローブの軌跡と接触に伴う反力の記録が可能な装置の開発を進行中である.本年度は,構成要素である3軸ロボット,6軸力覚センサを導入し,制御システムの構築を行った.また,手法開発段階でも円滑な測定データ作成を実現するため,ロボットの代わりに人間の手により直感的な入力を可能とするモーションキャプチャシステムの導入を行った. 最適化ソフトウェアについては,最終的には3次元かつ不均質な材料に対する内部材料特性の推定を目指すが,本年度は初期検討として2次元均質材料を対象とした検討を行った.また,最終的には開発したハードウェアを用いて得られたプローブの軌跡と反力の実測値を最適化ソフトウェアに入力し,物体内部の材料特性の推定を行うが,現段階では実測値の代わりのデータを数値シミュレーションにより作成し最適化アルゴリズムの入力値とした.したがって材料値が既知であり,最適化アルゴリズムによる推定値とこの既知の値を比較することでアルゴリズムの妥当性を評価可能である.現状では,MATLAB Optimization Toolbox の非線形計画法ソルバーを用い,均質な線形弾性体モデルに対しヤング率の推定が可能であることを確認した.今後は本フレームワークをベースに発展させていく. また,2018年度はソフトウェア開発において最適化アルゴリズムの一部である物理エンジンの改良を行い,能動的運動対象物に対する力覚的相互作用と接触力の時空間分布計算が可能となった.これらの成果についてはそれぞれCEDEC2018,VR学会年次大会,ハプティクス研究委員会研究会等で発表し,VR学会年次大会では学術奨励賞を受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度はハードウェアの構築と最適化アルゴリズムの基礎検討を行う予定であった. ハードウェアに関してはおおむね計画通りに3軸ロボット,6軸力覚センサ,制御システム(AD変換器、PC等),モーションキャプチャシステムを調達し導入した.しかしながら,これらの物品を組み合わせシステム統合することには作業時間を要しており,それぞれの構成要素を統合したシステムとしては完成していない. 最適化アルゴリズムの開発については,最適化の基本的なフレームワークを作成し,最低限の動作検討を行うことができた.当初の計画通り,ソフトウェア構成としては独自の物理エンジンを用いた力覚の数値シミュレータとMATLAB Optimization Toolbox を用いた最適化ソルバーを結合することとした.当初予定していた不均質材料・3次元の問題に対しては十分に検討することができなかったが,2次元の均質な線形弾性体モデルを対象とした場合に,目的変数が既知の正解値であるヤング率へ収束する結果が得られた.したがって,最低限の進捗は得られたと考えている.また,計画を進行につれ解決すべき問題が明瞭になり,当初の計画よりも具体的な段階的開発目標が得られた. 以上の状況を踏まえ,全体として遅れているがある程度の進捗が得られているため,進捗状況の区分は「(3)やや遅れている。」とした.
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今後の研究の推進方策 |
現状の進行状況を考慮し,以下のように実施計画を変更し実施する.ハードウェアについては,次年度も継続して開発を進め2019年度前半の完成を目指し進める.なお,当初は3自由度から5自由度への拡張を予定していたが,2019年度ではまずは3自由度での構築を目標とし,5自由度化は必要性について再検討し,より重要な最適化アルゴリズムを優先的に進める.最適化アルゴリズムについては,2019年度には数値シミュレーションによる入力データでなく,実測データを用いる予定であったが,研究を段階的に進めるため引き続き数値シミュレーションをベースとした検討を進める.具体的には以下のとおりである.まず,2次元問題において不均質材料の問題に取り組む.これが本研究課題の中で最も重要な段階であるため,十分に検討する.検討事項としては,問題に適した非線形計画法ソルバーの選択,非線形計画法ソルバーに与える適切な目的関数と制約条件の選択などがあげられる.最適化の結果の状況を見て,機械学習の利用などアルゴリズムの変更も視野に検討する.2次元・不均質材料における最適化問題の解決が順調に進めば,入力にモデル化誤差または測定誤差が含まれる問題の検討を行い,さらに3次元問題で同様の問題について検討する.入力データを数値シミュレーション結果でなく実測値を用いて行うことは,3次元問題での検討が終わってからを計画しているが,実測値取得のためのハードウェアの開発は並行して進め,シミュレーションベースの検討が終了した際に,容易に利用可能となるように準備する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,研究実施期間中に購入予定物品のうち要求性能を満たす安価な別の製品が見つかったためである.具体的には,6軸力覚センサをビー・エル・オートテック ThinNANO2.5 に,ハプティックデバイスを SPIDAR-GIIに,レーザ変位計の代わりにフォトグラメトリの利用に変更した.それに伴い,より研究を円滑に進めるため追加の物品購入を行ったが,次年度使用額が発生した. 次年度使用額については,次年度のハードウェア工作費(機械部品・材料・工具・電子部品等)にあてる.
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