研究実績の概要 |
昨年度までに開発した蝶型はばたきロボットについて,翼面積を増やすことでペイロードを増加させた翼幅200mm,質量2gの機体を開発し,運動解析を行った.これまでの機体は,モデルとしているアゲハチョウと同等の翼幅100mm程度の翅であったが,1.2gの機体重量ではペイロードが足りずに飛翔することはできなかった.よって,翼幅と翼弦長をそれぞれ2倍にした翅を有する新たなモデルを開発した.このモデルが生成する揚力を測定するため,初年度開発した3軸力覚センサに取り付け,3台の高速度カメラを用いて運動解析を行った.はばたき角を50°(翅打ち下ろし角40°, 翅打ち上げ角-10°),はばたき周波数約10Hzで運動させた結果,翅の打ち下ろし時に自重を支えられる21mNの揚力を生成できていることが確認できた.これに対し,蝶と同等の翼面積をもつ翼幅100mmの機体ではわずか5mNの揚力であった.よって,アゲハチョウの2倍スケールの翼面積で10Hzのはばたき周波数であれば,モータを実装した本モデルは,自重を支えるだけの揚力を生成できることが明らかになった.また,同じはばたき周波数であれば,生成される揚力の大きさは翼面積に関係し,本手法によりその定量的な解析が可能であることも示された. 次に,昨年度はばたき1周期のみの解析であった3種のモデルについて,飛び立ち後のはばたき2周期分のCFD解析を行った.翅の打ち下ろし角と打ち上げ角の中立角が異なるモデル(0°: 地面の水平,10°:上反角,-10°: 下反角)の揚力,抗力,ボディ重心周りのピッチ回転モーメントを解析した結果,上昇方向の揚力の最大値に大きな差は見られなかったが,中立角が10°のモデルのピッチ回転モーメントは,ボディを起き上がらせる(機首上げ)方向により大きな値を示していることが明らかになった.
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