研究課題/領域番号 |
18K13735
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
高橋 克幸 岩手大学, 理工学部, 准教授 (00763153)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヒドロキシラジカル / 極性効果 / 電気的パラメータ / 栽培 / ジクロロ安息香酸 |
研究実績の概要 |
電気的パラメータが放電進展とラジカル発生ならびに溶液の処理効率に及ぼす影響を調べるため、有機染料であるインジゴカルミンをヒドロキシラジカルの化学プローブとして用い、溶液中へのラジカル供給効率を評価した。有機染料の分解量すなわち、溶液へのヒドロキシラジカルの供給量は正極の方が大きいことがわかった。一方、放電の進展性と発光強度は負極の方が大きく、この結果と矛盾する。この要因としては、正極放電では放電チャネルと液面間にシースが形成され、放電によって生成された正イオンが液面へスパッタされることによりヒドロキシラジカルが生成されていることが考えられる。 注入気体を酸素とした場合は、湿度が低い気相中でオゾンを高効率で生成し、溶液へ溶解することによって、処理効率が向上した。アルゴンを注入した場合は、ガラス管内ではなく、気泡内での放電体積を増加することにより、処理へ寄与するヒドロキシラジカルを効率よく生成することができ、処理効率が増加することがわかった。印加電圧および、放電繰り返し間隔を小さくし、ガラス管本数を増加することによって多箇所で放電を行うことによって、気泡内における化学的活性種の高濃度化を抑制し、処理へ寄与する化学的活性種の割合を増加できることがわかった。また、電極間隔を広げ、電極面積を小さくすることにより、溶液の抵抗成分が増加し、導電損失を低減できることが明らかになった。 液面放電処理方式を用いた養液処理ならびに、植物栽培システムの構築を行った。植物栽培に用いる養液の量は20Lとし、養液タンクと放電処理部間で養液を循環させて処理するリアクタを用いた。予備実験として、キュウリの栽培を行ったところ、10μMの濃度の2,4-ジクロロ安息香酸の混入により、有意に生育阻害がみられることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、当初の計画通り、電気的パラメータと養液内有機化合物の処理効率との関連性の解明を行った。その結果、放電中のヒドロキシラジカルの生成量は負極性パルスの方が大きい一方で、溶液へのヒドロキシラジカルの供給量は正極の方が大きいことが明らかになった。この要因としては、正極放電では放電チャネルと液面間にシースが形成され、放電によって生成された正イオンが液面へスパッタされることによりヒドロキシラジカルが生成されていることが考えられる。また、印加電圧および,放電繰り返し間隔を小さくし,ガラス管本数を増加することによって多箇所で放電を行うことによって,気泡内における化学的活性種の高濃度化を抑制し,脱色へ寄与する化学的活性種の割合を増加できることなどが明らかになり、放電処理システムの最適化に必要な基礎データを得た。また、液面放電処理方式を用いた養液処理ならびに、植物栽培システムの構築を行い、2,4-ジクロロ安息香酸の分解処理が可能であること、植物の栽培は問題無く行えることを確認した。これらのことより、当初の目的を十分に達成し、次年度の研究遂行が問題無く行うことができる
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度においては、当初の計画通り、開発した植物栽培システムを用い、農産物を栽培した場合の、プラズマ処理による植物の生体への影響を調べる。農産物には、栽培と生育阻害の様子の確認が比較的容易なキュウリやトマトを用いる。植物の生体における影響は、地上高さや葉面積、SPAD値、クロロフィル量の測定などで評価する。なお、プラズマ処理によって悪影響がある場合、その解決手法について検討を行う。これらの結果を踏まえ、栽培中に継続して処理が可能なシステムを構築し、本方式の妥当性について評価を行う。なお、令和元年度に得られた研究成果については、学会、研究会、国際会議等での口頭発表および査読付き学術論文への投稿を順次行う予定である。
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