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2020 年度 実施状況報告書

-忍者アレーアンテナ-モノスタティックレーダーに不可視のビーム走査アレーアンテナ

研究課題

研究課題/領域番号 18K13736
研究機関東北大学

研究代表者

今野 佳祐  東北大学, 工学研究科, 准教授 (20633374)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードフェーズドアレー / リフレクトアレー / レーダー
研究実績の概要

電磁波に対する不可視性とビーム走査能力を両立したアンテナは実現し得るのか、という学術上の疑問に対し、非同一素子から成る周期的アレーアンテナを提案してそれを実現した。提案アレーアンテナは忍者アレーアンテナと呼ばれ、後方散乱が小さいので、広帯域パルス電磁波を用いたモノスタティックレーダーに不可視である。
後方散乱が小さく、広帯域パルス電磁波を用いたモノスタティックレーダーに不可視な性質を有するアレーアンテナの実現は、セキュリティ上の観点から重要な意義を持つ。アレーアンテナは、空港のボディスキャナーや航空・気象レーダーに用いられることが多く、その性能は最高機密に属する。その一方で、こういったアレーアンテナは周期構造を持つので、後方散乱が大きくなり、広帯域パルス電磁波を用いたモノスタティックレーダーに捕捉されてしまう。アレーアンテナが持つこのようなセキュリティ脆弱性は長年問題になっていたが、有効な解決策はこれまでに提案されていなかった。本研究で提案する忍者アレーアンテナが実現されれば、後方散乱の小さいフェーズドアレーが実現され、レーダーとしての機能を損なうことなく、セキュリティの脆弱性を解消することができる。したがって、本研究の果たす社会的意義は大きい。
今年度は、忍者アレーアンテナの設計法をさらに高度化すべく、大規模アレー実現のための数値解析法の高速化を行った。大規模な忍者アレーアンテナの設計にも応用可能な技術として、リフレクトアレーの数値解析法を高速化した。そして、忍者アレーアンテナの高機能化を目指し、誘電体スラブを装荷したリフレクトアレーの研究を行った。また、関連技術として電流分布推定法等に関する研究を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の研究計画では、本年度の研究予定は以下の通りであった。まず、忍者アレーアンテナの高機能化を図る。設計法に素子間相互結合の影響を取り入れ、従来のアンテナと比較して後方散乱の20dB(=1/100)低減と、利得の3dB増加を狙う。振幅テーパ分布を導入してビーム走査法を改良し、サイドローブレベルの制御を実現する。数値シミュレーションと並行して試作と実験を行い、アレーの高機能化を実現する。
一方、これまでの研究では当初の予想と異なる結果がいくつか得られている。例えば、LPDAから成る忍者アレーアンテナの後方散乱が一様なアレーと比較して17dBの低減が実現できている。また、その利得も一様なアレーアンテナとほとんど同じである。当初の研究計画に示されている目標は、忍者アレーの後方散乱性能が素子間相互結合によって悪化することと、一様でない開口分布によって利得が下がることを前提としていたが、そのようなことは起きなかった。
本年度は、このような研究の進捗状況を踏まえ、当初の研究の方向を修正・発展させ、大規模化・高機能化を目指した。まず、大規模な忍者アレーアンテナの設計にも応用できる技術として、リフレクトアレーの高速な数値解析法を構築した。そして、忍者アレーアンテナの高機能化を目指し、誘電体スラブを装荷したリフレクトアレーの研究を行った。
また、アレーアンテナの電流分布推定法等の研究も関連・応用研究として行った。これらの研究は、当初の計画にはなかったものの、忍者アレーアンテナとの関連が深いので遂行したものである。

今後の研究の推進方策

これまでの研究で、モノスタティックレーダーに不可視な(=後方散乱の小さい)忍者アレーアンテナの基本的な設計法および試作・測定法については十分な知見が得られたと考えている。最終年度となる次年度の研究では、今年度に引き続き、忍者アレーアンテナの効率的な設計技術や高度化、周辺技術の研究を更に推進する予定である。
例えば、これまでは金属から成る忍者アレーアンテナの研究を実施してきたが、今後は誘電体のみから成るリフレクトアレーの設計法の構築を行い、忍者アレーアンテナの高度化につなげたい。また、誘電体板を装荷することによるリフレクトアレーの高機能化の研究を更に推進し、忍者アレーアンテナの利得や帯域、電界強度などをコントロールする技術の確立を目指したい。加えて、素子の散乱電界の位相を制御する技術として、機械的な位相制御技術についても検討したいと考えている。これらの研究は、当初の研究計画にはなかったものであるが、本研究を発展させるのに寄与する内容である。これらの周辺技術を研究することで、研究計画を発展・加速させる予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初予定よりも研究の進捗が順調であり、少ない消耗品で研究が進んだことが次年度使用額が生じた理由の1つである。また、新型コロナウイルスの蔓延によって国内外への出張機会がなくなり、旅費が当初予定よりも少なくなったことも理由として挙げられる。次年度使用額として繰り越した金額は、順調に得られた研究成果の外部への公表や、周辺技術の研究のための消耗品等に充てる予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Efficient Method of Moments for Numerical Analysis of Antennas With Variable Load Impedance2020

    • 著者名/発表者名
      Konno Keisuke、Yuan Qiaowei、Chen Qiang、Yokokawa Kei、Goto Jun、Fukawasa Toru
    • 雑誌名

      IEEE Transactions on Antennas and Propagation

      巻: 68 ページ: 8233~8237

    • DOI

      10.1109/TAP.2020.2985979

    • 査読あり
  • [学会発表] Application of An Efficient Method of Moments to Numerical Analysis of 1-bit Transmitarrays2021

    • 著者名/発表者名
      K. Konno, Q. Yuan, Q. Chen, K. Yokokawa, J. Goto and T. Fukasawa
    • 学会等名
      Proc. ISAP2020
    • 国際学会
  • [学会発表] 誘電体スラブによるリフレクトアレーの高利得化に関する研究2021

    • 著者名/発表者名
      知久 望海,今野 佳祐,陳 強
    • 学会等名
      電子情報通信学会総合大会
  • [学会発表] 仮想波源の固有モード電流を用いた波源分布推定法の高精度化2020

    • 著者名/発表者名
      持木 和人,今野 佳祐,陳 強
    • 学会等名
      電子情報通信学会技術研究報告
  • [学会発表] A Study on Fast Method of Moments for Large-Scale Reflectarrays2020

    • 著者名/発表者名
      T. Susuga, K. Konno, and Q. Chen
    • 学会等名
      Proc. ICETC 2020
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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