積層超電導体を用いた埋込永久磁石型モータ(IPM)に関して、界磁部分の超電導特性の考察を行うため、積層超電導体及びバルク超電導体を磁界中冷却法(FC法)にて着磁した際の着磁磁束密度を比較し考察を行った。本実験に当たり、積層超電導体は市販の幅4 mmの線材を低温はんだで接着し、20 mm×40 mm×5 mmの直方体のサンプルを試作した。本サンプルを液体窒素(77 K)による浸漬冷却を行い、外部磁界2.0 Tの環境下で着磁した。実験の結果、最大で約25 mTの着磁ピーク値が得られた。左記と同サイズのバルク超電導体で同様の条件で実験を行った場合、約300 mTと着磁の値には10倍程度の差がみられたが、これは積層線材の臨界電流が100 A程度であったことに起因しており、更に積層超電導体サンプル中における占積率がバルクと比較して低かったことに起因するものと考えられるが、超電導線材の臨界電流値は製品によっては今回使用した線材の数倍の値を持つものも存在し、かつ試作サンプルにおける低温はんだの塗布方法を工夫し、線材の積層数を増加させて超電導体の占積率を増加させることによりバルクの着磁磁束密度により近づけていくことが出来ると考えられる。 上記に加え、IPMとしてだけでなくリラクタンスモータとしての可能性も考察するため、着磁しない状態の積層超電導体を市販のIPMモータ用回転子の永久磁石挿入用スロットへ挿入してモータの出力試験を行った。積層超電導体を界磁へ実装した場合と実装しない場合(ロータ内の界磁はなし)でのトルク、回転数、出力の測定を行ったところ、積層超電導体を使用した場合には、モータ出力が界磁なしの場合と比較して90%程度向上することが確認された。すなわち、限定的な条件ではあるが積層超電導体を着磁せずにモータ回転子へ実装し、磁気遮蔽材として使用した場合にも有用である可能性が示された。
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