事故発生時の電流遮断や系統の復旧には高性能な遮断器・開閉器が必要不可欠である。従来では SF6ガスを用いて開極時のアークを消弧するガス遮断器が一般的であったが、SF6ガスの温暖化係数が非常に大きいことから真空遮断器の小型化、高性能化が注目されるようになった。しかし、真空遮断器の遮断試験において、アーク消弧後に短時間で絶縁を回復する絶縁破壊の発生が報告されている。この非持続性破壊放電(NSDD:Non-Sustained Disruptive Discharge)の発生機構についてはこれまでの研究で様々な議論がなされてきたが、そのメカニズムは未解明なのが現状である。本研究では真空ギャップ間の金属粒子と電界電子放出電流に注目し、真空ギャップでのNSDD現象の発生メカニズムを実験とシミュレーションの両面から検証した。 ギャップ間の微小な金属粒子から放電に至る過程を、蒸発->拡散->破壊の3ステップとし、それぞれの時間オーダをPIC-MCC法、有限要素法を用いた解析により計算したところ、粒子の蒸発には数10μm、拡散に数10μs、破壊は10ns程度の時間オーダで発生することが分かった。ただし金属粒子径として直径20μm程度の粒子を仮定しているが、これは光学観測で得られた金属粒子径から十分存在しうる大きさである。この結果から、NSDDで観測される時間遅れは放電過程より金属粒子の発生までの時間遅れが主要因であることが示唆された。
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