研究課題/領域番号 |
18K13742
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
清田 恭平 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 助教 (10796519)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リラクタンスモータ / 高効率化 / 特性切替 / スイッチトリラクタンスモータ / シンクロナスリラクタンスモータ |
研究実績の概要 |
本研究では、巻線を切り替えることで、極数ではなくモータの種類そのものを変更することにより、より高出力かつ高効率な自動車駆動用リラクタンスモータの実現を目指す。 本年度は、既存の実機モデルを利用した、解析による原理検証を実施した。これまでの研究において使用してきた、既に永久磁石モータと同等またはそれ以上のトルク密度・出力密度・効率を有するスイッチトリラクタンスモータのモデルを使用して、モータ種別を変更することによる効率向上幅の検討を、有限要素法解析により実施した。これにより、損失のうち鉄損の割合が大きい、高速かつ低出力の領域において最大15%の損失を低減可能であることを明らかにした。また、 同時に、モータ種別の切り替えを電気的に実施可能な回路構成について検討を行った。各相の巻き線を半分に分け、それぞれにフルブリッジインバータを接続した構成とすることにより、電気的な巻線切り替えが可能であることを明らかにした。この回路構成を用いて、巻き線切り替え時の過渡応答について解析を行った。解析により、スイッチトリラクタンスモータモードからシンクロナスリラクタンスモータモード、およびシンクロナスリラクタンスモータモードからスイッチトリラクタンスモータモードへの切り替えは、それぞれ電流一周期前後で切り替え可能であることが明らかになった。 また、巻線が集中巻であるため、スロット高調波による鉄損が発生すると見込まれていた。このため、シンクロナスリラクタンスモータモードにおいて、高調波による鉄損を抑制可能な回転子形状の検討を行い、鉄損を50%以上低減可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析により、当初の予想通り、スイッチトリラクタンスモータモードからシンクロナスリラクタンスモータモードにすることにより、鉄損が低減し効率が向上することが明らかになった。ただし、当初の懸念通り、鉄損の低減幅は25%程度であり、大幅な効率改善とはなっていない。これは集中巻き構造を有しているためである。現在、シンクロナスリラクタンスモータモードにおいて、より鉄損が低減可能な回転子構造についての検討を同時並行で進めた。実際にシンクロナスリラクタンスモータモードにおいて鉄損が低減可能な回転子構造が明らかになったため、今後鉄損が低減可能な回転子構造を採用することにより、モータ効率がさらに向上可能であることを明らかにする予定である。 なお、鉄損に関しては実機と解析との乖離が発生することが知られている。このため、実機試験による検証が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
二年目前半は、負荷モータや負荷モータ駆動用インバータ、各種測定器、その他周辺装置の調達およびセットアップを実施する。なお、設計を行ったモータの巻線構造が集中巻であるため、スロット高調波による鉄損が発生すると見込まれる。このため、巻線を切り替えた後の状態において、高調波による鉄損を抑制可能な回転子形状の更なる検討も、実験装置のセットアップと同時並行で行う。また、実機試験に用いる制御プログラムの製作を事前に行う。 二年目後半は、一年目で検討を行った、既存のハイブリッド自動車駆動用モータをベースとしたモータの試験を行う。巻線を切り替えることによるモータ特性の変化を実機にて測定する。実機における銅損および鉄損を測定することにより、有限要素法解析との鉄損の誤差を確認する。特に、鉄損においては、解析と実機試験結果で齟齬が発生しやすいため、解析手法の確認も含めて考察を行う。銅損および鉄損の誤差を考慮することにより、実際にハイブリッド自動車に組み込んだ際の、巻線を切り替えることによる効率の向上幅の推定を行う。最終的には、実機試験の結果をフィードバックし、より高効率を達成可能な構造の検討を解析にて行う。また、各モータモードにおいて、ベクトル制御の導入を含めた制御方法の再検討を行い、制御によるモータ効率向上の検討を解析および実機試験によって行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定では、今年度中に負荷モータ等の発注を行う予定であった。しかし、詳細な仕様が確定するまでに時間を要していることにより発注が次年度に持ち越しとなり、次年度使用額が発生した。次年度では、負荷モータの発注を速やかに行う予定である。 研究期間内に、巻線を切り替えることにより高効率領域がより低出力領域に拡大可能であることを解析的に明らかにし、実機モデルによりその効果を実証する。このために実機試験で必要となる各種消耗品の調達を速やかに行う予定である。また実機試験と並行して、これまでの研究成果を国民に開示するために、電気学会、IEEEなどで発表を行う。このために出張旅費、印刷費が必要となる。また、謝金やモータの送料などが必要である。
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