研究課題/領域番号 |
18K13743
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
川島 朋裕 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70713824)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スラッシュ窒素 / サブクール液体窒素 / 絶縁破壊特性 / 部分放電特性 / 固体窒素粒径 / 固相-液相割合 |
研究実績の概要 |
スラッシュ窒素は固体窒素が高い融解潜熱を有するため、液体窒素よりも優れた冷却特性を示すと共に部分放電のエネルギーを固体窒素の融解に消費することで耐部分放電性が期待できる。本研究は、スラッシュ窒素の耐部分放電性を明らかにし、次世代超電導ケーブルの電気絶縁構成の高性能化に関する基本的指針を得ることが目的である。 平成30年度は、学術的に最も基礎的かつ重要な知見であると同時に、設計電界を決定する上でも重要な知見である、平等電界下におけるスラッシュ窒素の交流絶縁破壊電圧のギャップ距離依存性を明らかにすることを中心に取り組んだ。Freeze-Thaw法により簡易的かつ安定的にスラッシュ窒素が生成可能な装置を構築し、撹拌状態におけるスラッシュ窒素の交流破壊電圧をギャップ距離0.1mm~2mmの範囲で取得した。一般的に高温超電導機器の冷媒として採用されるサブクール液体窒素の交流絶縁破壊電圧と比較した。 Freeze-Thaw法により生成したスラッシュ窒素の流動状態と粒径を観察した。ミリオーダーの粒子(最大直径2mm程度)が主であるが、マイクロオーダーの粒子も観察された。ギャップ距離が0.75mm以下においては、スラッシュ窒素の絶縁破壊電圧はサブクール液体窒素とほぼ同等となった。1 mm以上の領域においては、スラッシュ窒素の絶縁破壊電圧は、サブクール液体窒素の約80% (平均値)となった。ギャップ距離1mmにおいて部分放電特性を取得した結果、スラッシュ窒素の部分放電発生数がサブクール液体窒素に比べて多いことも明らかとった。ギャップ距離が1mm以上の領域においては、ミリオーダーの固体窒素沿面が電気的弱点として作用し、多数の部分放電が生じるため絶縁破壊電圧が低下すると考えられる。一方、極めて小さい固体窒素沿面は電気的弱点として作用せず、絶縁破壊電圧を低下させる要因にならない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スラッシュ窒素の絶縁破壊電圧を決定する条件として、固体窒素の粒径と固相-液相割合がある。固体窒素粒子の割合が極めて少ない状態の絶縁破壊電圧をギャップ距離1mmの条件にて取得した結果、サブクール液体窒素の約50% (平均値)まで絶縁破壊電圧が低下することを確認した。固相が約80%の条件においてはサブクール液体窒素の約80% (平均値)の絶縁破壊電圧となり、その再現性が良いことを明らかにした。Freeze-Thaw法は簡易的かつ安定的にスラッシュ窒素を生成可能であるが、粒径の制御が難しい。固相-液相割合を制御して、絶縁破壊電圧が再現性良く取得できる撹拌および真空引き条件を見出した。これによって、凡そ統一された条件の下で部分放電特性の検討が可能となった。 平成30年度は、スラッシュ窒素の絶縁破壊特性が明らかとなった。ギャップ距離が1mmにおける部分放電特性の結果は、絶縁破壊電圧の低下を支持している。部分放電特性は一条件のみの検討であり、解析も不十分であるが、申請時に計画したスラッシュ窒素中の固体窒素が絶縁性能に与える影響を明らかにするための成果を得たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
スラッシュ窒素冷却による次世代超電導ケーブルの開発に資することを目指し、絶縁紙-スラッシュ窒素複合絶縁系の絶縁破壊特性を明らかにする。絶縁紙はケーブル湾曲部において巻き込みによる破損を防止するために一定の間隙(バットギャップ)を設けながら巻かれている。バットギャップと積層紙間の剥離部にて生じる部分放電が絶縁性能低下の要因となるため、バットギャップ中での部分放電特性を把握は必要不可欠である。平成30年度に実施したスラッシュ窒素単体における部分放電特性の理解を更に実験的に深め、バッドギャップ中における部分放電特性が絶縁破壊特性に与える影響について考察する。 平成30年度の成果は国際会議1件、国内会議1件で報告予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
高速度カメラおよびガラスデュワー瓶を計画通りに購入した。Freeze-Thaw法により簡易的かつ安定的にスラッシュ窒素を生成すると共に絶縁性能を評価できる装置を構築することも平成30年度の目的である。絶縁性能を評価するための電極系の設計、およびガラスデュワー瓶内での配線や電極系の配置の設計など、申請よりも液体窒素の使用量が少なかった。装置の完成によって試験数も増加すると考えているため、増加する液体窒素の購入に充てる予定である。
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