研究課題/領域番号 |
18K13744
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井渕 貴章 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90755646)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電磁環境両立性(EMC) / パワーエレクトロニクス / SiCパワーデバイス / 電磁雑音 / 温度特性 |
研究実績の概要 |
本研究は、電力変換機器の高効率・高電力密度化および適用範囲の拡大に向け、機器の設計寿命全体にわたり高レベルの省エネ特性と低電磁雑音特性を両立させる回路設計の実現を目的とする。高速スイッチング・高温動作特性を有するSiCパワーデバイスに対する連続通流試験や特性の動作温度依存性評価に基づき、雑音源であるデバイスの特性変化と回路から生じる電磁雑音との対応関係を明らかにする。電気回路・半導体物性・電磁気学等を総合し、電力変換回路の電磁雑音発生メカニズムの解明および電磁環境両立設計の基礎構築を図る。 本年度の成果について、同等定格を有するSiC MOSFETおよびSi IGBTのそれぞれについて、ハーフブリッジ・フルブリッジ回路構成においてスイッチング動作させ、前年度に検討した動的近傍磁界強度分布評価システムにより回路動作中に生じた雑音電流の周波数やレベルを可視化し、雑音源であるパワーデバイスのスイッチング特性と回路から生じる電磁雑音との対応関係を明らかにした。またSiC MOSFETのゲート駆動回路構成や寄生成分が電磁雑音特性に与える影響に関する基礎検討を行った。ゲートドライバICの電源回路構成に着目し、回路動作に伴って生じる雑音の帯域やレベル差異について実験検討により評価した。 同程度の電圧・電流定格を有する複数種類のSiC MOSFETについて、デバイス単体の電圧-電流特性、端子間容量のDCバイアス電圧依存性、およびスイッチング特性を比較評価し、これに基づいて電磁雑音源特性としての特徴づけを行った。非導通状態において測定できるMOSFETのドレイン・ソース間等価直列抵抗成分の大きさとスイッチング動作時の電圧・電流応答に生じる高周波数振動の減衰特性評価により、低電磁雑音源特性を示すSiC MOSFETの特徴やデバイス選定指標を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来広く使用されているSiパワーデバイスと比較して、さらなる高速スイッチング・高温動作特性を有すると期待されるSiCパワーデバイスの利点を最大限活用するためには、デバイス特性に起因して生じる電磁雑音の発生メカニズムを解明し、低電磁雑音特性を有する回路設計へと展開させる必要がある。本研究におけるこれまでの取り組みにおいて、回路配線やデバイスパッケージが有する寄生インダクタンスの同定やパワー半導体デバイスの端子間容量の特性評価に基づき、スイッチング動作に伴う電圧・電流の過渡応答に重畳するサージや高周波数振動の発生要因およびその減衰特性に寄与する素子パラメータを評価し、低電磁雑音源特性を有するSiCパワーデバイスの特徴づけを行っている。また電磁雑音源特性の評価に対する動的近傍磁界強度測定の適用や、スイッチング動作に必要なゲート駆動回路の構成・動作とパワーデバイスのスイッチング特性との対応評価など、デバイス単体の評価だけでなく電磁雑音評価法や周辺回路を含めた低電磁雑音回路設計に関する検討もあわせて行うことができている。 以上により、本研究の全体計画に対し、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果に基づき、SiCパワーデバイスに対する連続通流試験によってデバイス特性の変化・劣化について評価し、回路の電磁雑音特性に与える影響についての評価・検証を行う予定である。具体的には、評価対象とするデバイスに対し高温または低温環境下において一定期間定格電流を通流し続けるDCバイアス試験、および連続スイッチング試験を行い、SiCパワーデバイスのしきい値電圧変動やpn接合劣化等による電気的特性の変化を評価し、それらがコンバータの電磁雑音特性に与える影響について考察する。またこれまでの研究成果をまとめ、査読付き論文執筆・投稿を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関において現有する実験設備・実験機材の有効活用により、特に物品費の実支出額が交付額よりも少なく抑えられたため、次年度使用額が生じた。次年度の検討において使用予定の環境試験器のセットアップや恒温槽対応プローブの手配、および試験回路作成・動作実験に係るプリント回路基板、パワー半導体デバイス、受動素子、ゲートドライブIC、コネクタ・ケーブル等、種々の部品購入に充てる計画である。
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