本研究は,鉄心における磁気飽和を積極的に活用することにより,分数スロット集中巻モータのトルク・効率を向上させる設計の実証と,設計理論の確立を目指すものである.本研究の目的を達成するために,2020年度は,①磁気飽和による逆起電力の抑制効果に関する実験的検討,並びに②d軸及びq軸のインダクタンスと鎖交磁石磁束に基づく磁気飽和の影響の数値的検討を実施した. 2020年度の研究実績として,①磁気飽和による逆起電力の抑制効果に関する実験的検討により,入力電流に応じて磁気飽和を発生させることによって逆起電力を大きく抑えることができることを実証することができた.この抑制効果が発生する動作点においては,比較対象となる従来型と比較して効率の向上が期待できることも明らかにした.これらの結果を,2019年度では未実施であった高速回転時においても得ることができた.これらのことから,実験機において事前に数値的検討で予測していた固定子ティース先端部における磁気飽和の効果であると結論付けることができる.また,②d軸及びq軸のインダクタンスと鎖交磁石磁束に基づく磁気飽和の影響の数値的検討により,入力電流の大きさと位相に応じてd軸及びq軸のインダクタンスが大きく変化すること,さらには入力電流の増加に応じてd軸鎖交磁石磁束が増加することが影響して,出力トルクの減少を抑えつつ,逆起電力を減少させることができていることを明らかにすることができた.
|