本研究では,風力発電タワーなどの垂直導体における雷サージ現象を表現できる数値解析用等価回路モデルの構築を目的として検討を進めてきた。研究開始当初の見解では、サージ侵入直後の短時間特性とサージが垂直導体上を往復伝搬した後の長時間特性をそれぞれ表現する回路モデルを解析途中で切り替えることで表現できると考えていた。しかし、精度を向上させ、多角的な数値解析による検討の結果から、サージ伝搬速度が単純に導体上の往復回数のみで定まるわけではなく、サージの伝搬とともに周囲に形成される過渡電磁界の影響を受けることが明らかになった。サージ伝搬速度は、導体上の往復(最初の往路とそれ以降)に加えて、各時刻におけるサージの位置(大地からの高さ)によっても変化し、大地に近いほど鈍化する。 さらに、垂直導体上を伝搬するサージは、その導体の形状や寸法によっても等価的な速度を変化させることも明らかになった。タワー上端の一点から侵入したサージは、下端(長さ方向)に向かって伝搬しつつ、導体周方向にも伝搬するため、その伝搬距離に応じてサージは減衰し、等価速度も低下する。また、タワー高によっては、下端における特性インピーダンスも時間の経過とともに変化する。 本研究の成果として、従来あらゆる方向から検討がなされてきたにもかかわらず、いまだ結論が出ない「垂直導体問題」に対して、1つの方向性を提案するとともに、垂直導体の雷サージ特性を等価回路モデルへ落とし込む際に重要となる点を提示することができた。
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