本研究は、市販のインクジェットプリンタで実装可能であり、かつ印刷後即時使用可能なチップレスRFID(Radio Frequency IDentifier)技術の確立を目的とする。具体的には、バーコードやQRコードに類した2次元模様の導電性パターンを用いてパターン形状自身に情報を載せ、コイルアレイを用いて近傍磁界により導電性パターン形状をイメージングすることで、情報の取得を行うチップレスRFIDシステムの開発を目指す。昨年度の検討においては、近傍磁界を用いて過電流を誘導することにより、導電性パターンの性能劣化を誘発し、非接触の情報書込みが可能であるリング型のシンボル構造を示した。 本年度の研究においては、書き込み可能な複数のシンボルから成るチップレスRFIDタグを設計し、コイルアレイを用いた読み取りアルゴリズムを開発した。チップレスRFIDタグの設計においてはコイルアレイ型無線給電における知見を活用することで、チップレスRFIDタグおよびコイルアレイの高性能な設計が可能であることを示した。また、シンボル間を導電性パターンで塗りつぶすことにより、リング型シンボルの内側に存在する読み取りコイルのインピーダンスが周囲の読み取りコイルの読み取り値よりも必ず小さくなることが明らかとなり、この現象を利用することで軽量な読み取りアルゴリズムを開発した。現在これらの成果をまとめ,論文誌への投稿準備を進めている.また,これら検討過程でインピーダンス不整合による性能劣化を定式化し、この知見が無線給電の理論を拡張することにも繋がった。
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