無線通信環境をみるコンピュータビジョン技術の研究目的は、カメラやレーダなどの視覚(ビジョン)データから無線通信品質を予測することである。ミリ波通信や可視光通信、テラヘルツ通信など超高周波帯を用いた通信では、歩行者や車、植物などが見通し通信路を遮蔽すると信号電力が大きく低下し、通信品質を劣化させる。一方、反射物となるようなものが近傍に存在すれば、強い反射波を受信することで通信を継続することができる。このような電波伝搬空間情報はカメラやレーダなどビジョンデータに内包されており、それを読み解くことで通信品質を予測できる可能性がある。本研究の最終年度である令和3年度は、これまでの研究成果をまとめたコンセプトペーパーを国際共著により執筆するとともに、無線通信へのコンピュータビジョン応用に関する研究領域の拡大として、これまで取り組んできた問題の逆問題、すなわち、通信信号から画像的情報を復元する技術について検討した。すなわち、無線通信品質の変動をもとに、環境の状態を推定、特に画像として推定する方式について検討した。特に画像センシングと無線通信を同時に行なっている環境を想定し、遮蔽物などにより画像に大きな欠損領域が生じる場合において、欠損領域をその時の無線通信品質からマルチモーダル機械学習により復元する方法を確立した。これにより、見守りや監視において遮蔽による見逃しを低減でき、信頼性の高いコンピュータビジョンシステムの実現が期待される。
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