研究課題
本研究の目的は、臓器移植治療や自己免疫疾患治療などに用いられる免疫抑制薬による副作用の軽減・効能の最大化を実現するために、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサを利用した血中免疫抑制剤モニタリングシステムの要素技術を構築することである。免疫抑制薬の血中濃度変化をより連続的に捉えることで、個別に薬剤投与量の微調整が可能となり、免疫抑制薬による副作用と薬効が最小かつ最大化された安全で有効な治療法へ繋がる技術にむすびつくと考え、研究を進めてきた。2019年度は(2)前年度に構築したSPFセンサの性能を、マウス・アンチマウス抗体を用いて評価し、標準免疫抑制剤サンプルを測定する系を表面弾性波(SAW)デバイスにて確認した。前年度に蛍光溶液に対し濃度に応じた出力が得られていたSPFセンサで用いるSPR用チップに、protein Gが融合した足場タンパク質(ORLA85)とpolyethylene glycolチオールの自己組織化単分子膜を形成し、続いてprotein Gへマウス抗体を固定化することでバイオセンサチップを作製した。その後、蛍光分子(Alexa Fluor647)で修飾したアンチマウス抗体を測定したところ、アンチマウス抗体の濃度に応じたセンサ出力が得られ、0.6-10000 ng/mLの範囲で定量が可能であった。次に、同様の表面修飾法をSAWデバイスに施し、免疫抑制剤であるシクロスポリンA(CyA)を対象サンプルとして抗CyA抗体を固定化後、CyAの測定を試みた。予想通りCyAだけでは分子量が小さく、出力が得られなかったため、CyAの補足後にCyAと特異的に結合するシクロフィリンB(CypB)を感応部に負荷したが、明瞭な出力は得られなかった。反応系の原因が考えられることから、今後CypBをはじめに固定化するなど感応部の改善を図っていく。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Sensors and Actuators B: Chemical
巻: 296 ページ: 126579~126579
10.1016/j.snb.2019.05.056
Talanta
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