高速フーリエ変換(FFT)に比べ大幅な精度向上が見込まれるNon-Harmonic Analysis(NHA)を医用断層撮影装置であるMRIへ応用し、1.5テスラMRIで可視化が困難な700μm以下の体内深層の微細構造を観察できる超精細技術の開発を目的に研究を行った。本研究では、物理ファントムを1.5テスラMRIで計測し、MRI計測データをNHAで高精度解析することで、従来のMRI画像の1ピクセル以下に存在する微小な撮像対象をNHAで可視化できるか基礎的な検討を行った。 令和3年度では、水分強調撮像と脂質強調撮像に対して、NHA解析とMRI画像再構成を統合した高精細MRI画像化システムの開発を行った。システム設計の際に、各撮像法に対するNHA解析条件や後処理の先鋭化フィルタ等の画質向上に関するパラメータを最適化し、サイドローブ抑制やコントラスト強調の改善を図った。NHAによるMRI画像化では、空間分解能を約30μmに設定し、物理ファントムを用いて従来は観察が困難な微小領域の可視化実験を行った。脂質が混合された成型肉を物理ファントムとして1.5テスラMRI(MRmini SA:小動物用MRI、DSファーマバイオメディカル)で撮像し、NHA解析により作成されたMRI画像の空間分解能やSN比等に関して数値評価を行った。脂質強調による撮像では、脂質とそれ以外の部分でコントラストの差が明確になり、従来法に比べ境界部分が鮮明に表現されることがわかった。また、従来のMRI画像で表現されない、強度分布の疎密状態が可視化されており、成形肉の約150~300μmの微小な繊維質や極小の油分に関する強度を可視化できている可能性を示した。
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