研究課題/領域番号 |
18K13765
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
砂口 尚輝 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (60536481)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小角散乱X線イメージング / 放射光 / 乳癌 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,新たに開発した小角散乱X線撮像法は(USAXS)を用いて,従来の吸収コントラストX線撮像方式では困難であった初期乳癌の特徴である微小石灰化や腫瘤の形成のない段階での早期の微小腫瘍細胞などを描出することである.これまでに提案されているUSAXS法は,散乱が生じやすい微小石灰化等を描出できるものの,感度が不足しており,微小な腫瘍組織を描出するには至っていない. 平成30年度は,乳房組織内の微小な腫瘍組織を描出する感度を有す,小角散乱測定用結晶光学系を設計及び製作し,撮像システムを高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーBL14Bビームラインに構築して基礎実験を行った.まず,実験用に準備した微小粒子を含む物理ファントムを用いて,本撮像システムの描出能を評価した.従来のDEI方式による小角散乱撮像法と比べ,描出能は向上したものの,描出能は入射ビームの平行性と関係があり,平行性を高めるためにX線をコリメートするとビーム強度が落ちる課題がある.次年度で,実用的な条件を探索する.また,本手法による測定データからX線画像を再構成する手法を開発した.30年度後半の実験では生体組織を撮像した.現在,撮影データに再構成法を適用し,評価を進めている.現システムの一番の課題は,シングルスリットを用いたスライスビーム撮像方式による長時間撮像であり,今後,マルチスリットを導入し,短時間に撮像できるように改良を進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画で示した項目の通りに研究が進んでいるため.
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は,被写体前に設置した非対称モノクロコリメータのb値を変え,入射ビームの平行性を最適化し,実用的なビーム強度と画質の探索を行う.また,現在はスリットを用いたスライスビーム撮像方式を撮影しているため長時間撮像が必要であるが,今後はマルチスリット化し,一度に撮像できるように改良する.さらに,高画質かを目指すために再構成法の改良を同時に進める.様々な生体試料を撮影し,本手法の有効性を示す.本手法の詳細な撮像性能であるコントラスト分解能・空間分解能・必要露光量等についても従来法と比較しながら評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は,若手研究における独立基盤形成支援(試行)による追加配分のため,次年度以降に使用する計画である.
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