研究課題/領域番号 |
18K13766
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
高柳 真司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00735326)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 圧電デバイス / 酸化亜鉛薄膜 / 曲面成膜 / 弾性波 / 表面波 / 横波型 |
研究実績の概要 |
本研究は、液体の導電率や粘度を測定できる横波型弾性波センサの開発を目的としている。特に、横波型弾性波を石英パイプの円周方向に周回させ、弾性波が液体試料とより長く接触することで、センサの高感度化を目指す。 当該年度では、横波型弾性波を励振するために必要な酸化亜鉛薄膜を石英パイプ側面全周に成膜する手法について検討した。これまで、研究代表者の研究により、横波型弾性波を励振可能なc軸平行ZnO膜(圧電軸が基板面内で一方向に揃った酸化亜鉛薄膜)を石英パイプ側面一部に成膜することに成功している。しかし、弾性波が少ない減衰で周回するためには、側面全周を滑らかに成膜する必要がある。そこで、スパッタ法による成膜中に、真空回転導入器やモータなどで構築した自動回転機構を用いて石英パイプを回転させることで側面全周に成膜を行った。作製した薄膜をX線回折法で評価した結果、側面全周でc軸平行ZnO膜が得られていたが、場所によって結晶性のばらつきが見られた。ここで、石英パイプの回転速度について検討したところ、高速では全体的な結晶性が悪くなり、低速では部分的に良い結晶性が得られるものの場所によるばらつきが大きくなる傾向が見られた。本研究では、直径20mm、肉厚1.5mmの石英パイプに対して、1.6 rpmで回転させた場合にX線回折強度のばらつきが全体で6%程度に抑えられた。現在、より小型な石英パイプ側面へのc軸平行ZnO膜作製について検討しており、直径6.8 mmの石英パイプ側面一部でc軸平行ZnO膜が得られている。自動回転機構を用いることで、小型な石英パイプでも側面全周への成膜が期待される。 また、効率良く弾性波を励振するための電極構造についてのシミュレーションや、実際に電極パターンを作製する微細加工手法の検討、横波型弾性波の測定系の構築についても並行して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、横波型弾性波センサの中核となる酸化亜鉛薄膜の作製手法の検討が大きな課題であった。特に、石英パイプ側面全周のような曲面上への成膜については、これまであまり例が無かったが、自動回転機構を用いて回転速度などの成膜条件を検討することで、側面全周で結晶性のばらつきが少ない薄膜を得ることができた。最終目標である1/4インチパイプへの成膜に向けて直径6.8 mmパイプでの検討も進めており、同様の自動回転機構を用いることでより小型なパイプ側面全周への成膜も期待できる。 一方で、横波型弾性波の測定を行うための電極構造作製についても検討を行ったが、現在の手法では歩留まりが悪いため、学外の共同利用微細加工施設に相談しプロセスの改善を考えている。 また、センサの測定系を並行して構築し、簡単な弾性波の送受波が観測できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
横波型弾性波センサの中核となる酸化亜鉛薄膜の成膜については、1/4インチ石英パイプへの成膜に向けて、小型なパイプにおける自動回転成膜に関してこれまでの直径20 mmの場合と同様の検討をしていく。 また、弾性波を励振するためには酸化亜鉛薄膜上に電極の作製が必要となるが、現在は作製の歩留まりが悪いため、微細加工の条件などを検討してプロセスを改善する。 そして、横波型弾性波センサを用いた測定について、まずこれまでに成膜できた直径20 mmの石英パイプで検討する。これまでに構築したセンサ測定系を用いて、センサに正弦波バースト信号を入力し、時間波形から弾性波の多重周回を観測する。続いて、パイプセンサ外部または内部に液体試料を負荷し、多重周回波の周回時間差や振幅減衰から液体の粘度特性などを測定する。これらで検討した手法を用いて、最終的に1/4インチ石英パイプによるセンサの検出限界の評価を目指す。
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