研究課題/領域番号 |
18K13769
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
氷室 貴大 成蹊大学, 理工学部, 助教 (70803964)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイクロデバイス / DNA / DNA分解酵素 / インピーダンス計測 / 静電配向 / マイクロ流路 |
研究実績の概要 |
DNAをセンシング材料として用いるために,その電気的な特性について,交流インピーダンス法を用いることにより評価した.まず,ガラス基板上に間隔15μmだけ隔てて2つのアルミ製薄膜電極を形成し,その上にPDMS製のマイクロ流路を構築した.そして,静電配向(交流電界下のDNAの分極作用に基づいた力が生じる現象)を利用することで電極間にDNAを伸長しつつ固定化した.このとき,電極は先鋭鋭利型とし,電界が集中した点においてDNAが再現性良く伸長固定されるような形状とした. 蛍光色素YOYO-1によって長さ16μmのλDNAを標識し,その混合溶液を流路内に満たした.そして,電極間に1MHz,20Vp-pの交流電圧を印加することで,λDNAを電界方向に伸長させるとともに電極上へ静電的に固定化し,これを蛍光観察により確認した.そして,交流インピーダンス法を用いて電極間の周波数特性を調べ,複素インピーダンスプロットを作成した.周波数を100Hzから5MHzまで掃引したところ,電極間に固定化されたDNAの複素インピーダンスプロットは大きな半円(低周波域:100~5kHz)と小さな半円(高周波域:5k~5MHz)から成る形状を有することが確認された.その結果から,DNAが固定化された電極間の等価回路は,RC並列回路が2つ直列に連なった形になると推測された.さらに,電極の先鋭数を変更することで固定化されるDNAの本数を変更し,固定化本数と電極間のインピーダンスとの関係を求めた.プロット上に現れた高周波域の小さな半円の直径の大きさは,DNAの固定化本数に依存することが確認され,電極の先鋭数の増加に応じてインピーダンスが減少する相関を得ることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究実施計画に記載した先端鋭利型の電極の設計及び作製,電極間に固定化したDNAの電気的特性評価,DNAの等価回路モデルの構築など,全ての計画内容を実施し,当初目標としていた成果を得ることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
本デバイスをDNA分解酵素検出デバイスへと応用するために,以下のようにしてDNAを利用した計測法を構築する.まず,DNAを微小電極間に伸長固定した後に,マイクロ流路を通じてDNA分解酵素を導入する.すると,電極間に到達したDNA分解酵素は,酵素反応により電極間のDNAを切断する.これにより,DNAの断片は欠落し,電極間のインピーダンスは増加する.このとき,電極間に多数のDNAを固定化しておけば,DNA分解酵素の濃度や活性に応じて切断されるDNAの本数が異なり,それに応じたインピーダンスの変化が生じると予想される.このように,DNAの切断に伴うインピーダンス変化により,DNA分解酵素を検出することが可能となる. 今後はまず,上記手法を用いて,高濃度のDNA分解酵素溶液を導入した際の電極間の特性の変化を複素インピーダンスプロットにより評価する.これにより,DNAの断片は欠落し,電極間のインピーダンスは増加する(高周波域の小さな半円の直径が大きくなる)と考えられるため,この評価実験を通じて,DNAインピーダンスと導入するDNA分解酵素濃度との相関を求める.
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた学会の内,一つの国内学会において学会参加費及び旅費が不要となったため. 生じた次年度使用額に関しては,引き続きDNA試薬やDNA分解酵素関連試薬が必要となるため,それらの購入に充てる.
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