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2019 年度 実施状況報告書

DNAインピーダンスを利用したDNA分解酵素センサの開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K13769
研究機関成蹊大学

研究代表者

氷室 貴大  成蹊大学, 理工学部, 助教 (70803964)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードマイクロデバイス / DNA / DNA分解酵素 / インピーダンス計測 / 静電配向 / マイクロ流路
研究実績の概要

微細な先鋭電極間に固定化したDNAを利用して,DNA分解酵素(DNase)の計測法を構築した.まず,静電配向を用いてDNAを微小電極間に伸長固定し,その後にマイクロ流路を通じてDNaseを導入する.すると,電極間に到達したDNaseは,酵素反応により電極間のDNAを切断する.これにより,DNAの断片は欠落し,電極間のインピーダンスは増加する.このとき,電極間に多数のDNAを固定化しておけば,DNaseの濃度や活性に応じて切断されるDNAの本数が異なり,それに応じたインピーダンスの変化が生じると予想される.このように,DNAの切断に伴うインピーダンス変化により,DNaseを検出することが可能となる.
マイクロ流路を用いて溶液を送液する際,その送液速度が速すぎると,DNaseの有無に関わらず電極間のDNAが剥離してしまう可能性がある.そのため,まずは送液流量の最適化を試みた.昨年度構築したDNAの等価回路モデル中の抵抗成分に着目し,その抵抗値の変化を読み取ることで,電極間のDNAに変化が生じたかを評価した.その結果,0.3 μl/minの流量では,抵抗値の変化がほとんど観察されず,本デバイスを用いる際の最適な送液流量は0.3 μl/minであると判断された.そして実際に,最適化した流量でDNase溶液を導入した結果,血液中に含まれるDNase濃度よりも10倍程度高い0.0001 unit/μlのDNase溶液において,DNAの抵抗成分が3.5倍程度増加することが確認された.溶液操作におけるDNAの剥離は考えられないため,この増加は酵素反応に由来するものだと考えられる.さらには,DNase溶液の濃度に依存して,DNAの抵抗成分の値が変化することを確認し,DNase濃度と抵抗値の増加比との相関を得ることに成功した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

交付申請書の研究実施計画に記載した内容に基づいてDNA分解酵素の計測法を構築した.このとき,マイクロ流路内に導入する溶液の流速を最適化し,DNAを固定化した先鋭電極,DNAの等価回路モデルを使用することでDNA分解酵素溶液の濃度を定量化することに成功した.これらにより,当初目標としていた成果を得ることができたため.

今後の研究の推進方策

本年度実施した実験によって,低濃度のDNase溶液(0.0001 unit/μl以下)を導入した場合,抵抗値の増加比が濃度に対して線形的に変化することが示された.そこで,DNaseを含まない溶液を導入した場合の増加比,標準偏差を基準とし,本デバイスの検出限界を算出したところ,その値は0.000055 unit/μlとなった.血中に含まれるDNase濃度を計測するためには0.00001 unit/μlレベルを高感度に検出できる必要があり,さらなる高感度化が必要となる.そこで,まずは電極形状の最適化を図る.本年度の実験では,電極間に12個の先鋭を設置したデバイスを用いたが,この先鋭数を変えることによってDNAの固定化本数を制御することが可能なため,DNaseを検出する上での先鋭数の最適化を行う.また,本実験により,流路内に溶液を導入する際の最適な流量は0.3 μl/minであることが判明したが,この流量では計測全体に1時間以上の時間を要してしまい,心筋梗塞等の特定の疾病の早期診断を目指す上では,この数値は現実的ではない.現在の実験では,流路内に導入されたDNase溶液を超純水に置換して計測を行う必要があり,この作業が余分な時間となっているため,DNaseを早期に検出できるようシステムの見直しを行う.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] Electrical detection of deoxyribonuclease using DNA molecules immobilized between microelectrodes2019

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Himuro, Shota Tsukamoto, Yoji Saito
    • 学会等名
      The 23rd International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences (MicroTAS 2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] Deoxyribonuclease Detection by Measuring Electrical Impedance of DNA Molecules2019

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Himuro, Shota Tsukamoto, Yoji Saito
    • 学会等名
      The 8th Annual World Congress of Advanced Materials 2019 (WCAM 2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] マイクロ流路中の電極間に固定化したDNAによるセンシングデバイスの開発2019

    • 著者名/発表者名
      氷室貴大,塚本翔太,齋藤洋司
    • 学会等名
      電気学会 センサ・マイクロマシン部門大会 第36回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム
  • [学会発表] DNAの電気的特性を利用したDNA分解酵素センサの開発2019

    • 著者名/発表者名
      塚本翔太,氷室貴大,齋藤洋司
    • 学会等名
      第79回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] 微細電極間に固定化したDNAを用いたDNA分解酵素の測定2019

    • 著者名/発表者名
      氷室貴大,塚本翔太,齋藤洋司
    • 学会等名
      日本機械学会 2019年度年次大会

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公開日: 2021-01-27  

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