微細な間隔を有する2つの電極間に固定化したDNAを利用して,心筋梗塞の診断マーカーとして期待されるDNA分解酵素(DNase)を計測するデバイスを開発した.まず,ガラス基板上に間隔15μmだけ隔てて2つのアルミ製薄膜電極を形成し,その上にPDMS製のマイクロ流路を構築した.このとき,電極は先端鋭利型とし,静電配向を利用することでDNAが再現性良く伸長固定されるような形状とした. DNAの伸長固定を行った後に,マイクロ流路を通じてDNaseを導入し,DNA切断に伴うインピーダンスの増加を計測することにより,DNase検出を試みた.DNaseの濃度条件を0.1unit/μlから0.00001unit/μlまで変化させ,DNAの抵抗成分の増加比とDNase濃度との相関を調べた.その結果,低濃度のDNase反応においても抵抗値の増加が確認され,その増加比はDNase濃度が高いほど大きくなることを確認した. そして,電極形状による増加比の違いを検討するために,先鋭型の他に平行型の電極を作製し,それぞれから得られた酵素反応前後の抵抗成分の増加比を比較した.その結果,先鋭電極を用いた場合の方が高い増加比が得られており,測定の感度が向上することがわかった.これは,先鋭型の方が,DNAの固定化本数が少なく,その分DNA切断に伴うインピーダンス変化が大きくなるためと考えられる.さらに,先鋭数を8対,12対,24対と変更した場合の検出感度をそれぞれ調べたところ,先鋭数を多くするほど検出感度が高くなる傾向が得られた.これは,固定化本数が少ないほどインピーダンス変化は大きくなるが,少なすぎると再現性のばらつきが大きくなりやすく,そのばらつきが検出限界値を大きくしたためであると考えられる.以上のことから,適切な先鋭数を有する微小電極を用いた本手法により,DNaseを高感度に検出できる可能性が示唆された.
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