前年度は深層学習の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を応用したレーダ画像によるドローンの識別法を新たに考案し,鳥を模擬した鳥型ラジコンとドローン,ドローンの機種の識別の基礎的な検討を実施した.今年度は当該手法の有効性を明らかにするために,前年度までの検討で不足していた以下の事項について検討を行い,関連する研究成果として学術論文1件,国際会議論文1件,国内学会発表5件の成果をあげた. 1.レーダとの位置関係を変化させたときの各種ドローンのレーダエコーの測定及び識別性能の評価 前年度はドローン正面からレーダ信号を照射した場合のみの検討であった.実際の運用ではドローンはレーダより上空から飛来すると考えられるため,ドローンを下方から様々な角度(仰角)で捉えた場合の各種ドローンのレーダエコーのデータ測定を行い,前年度のデータを含む様々な角度のデータセットによる識別性能について検討した.その結果,鳥型ラジコンとドローンを99%,ドローンの各機種を約88%の精度で識別できることを確認した. 2.複数のCNNモデル及び再帰型ニューラルネットワーク(RNN)による識別性能の評価 CNNには層の深さの異なる様々なモデルがあり,識別性能が変化することから,代表的な4種のCNNモデル(AlexNet,GoogleNet,ResNet-50,ResNet-101)を用いてドローンの識別性能を比較検討した.その結果,CNNの層を深くしても識別精度は横ばいであり,深層化による精度向上は難しいことが分かった.また,項目1の測定でレーダエコーの時間変化に機種ごとに一定の特徴があったことから,動画像を取り扱うことのできるRNNのLSTMとCNNを組み合わせたConvLSTMを用いた場合の識別性能も検討した.その結果,ドローンの各機種を約96%の精度で識別でき,CNN単体よりも識別精度を向上できることを確認した.
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