研究課題/領域番号 |
18K13775
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
伊吹 竜也 東京工業大学, 工学院, 助教 (30725023)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 制御工学 / 協調制御 / 学習制御 / ドローンネットワーク |
研究実績の概要 |
平成30年度は,ドローンネットワークの学習型位置・姿勢協調制御について,複数のマルチロータ型UAV(ドローン)の分散型位置・姿勢協調制御,およびドローン単体の学習型位置・姿勢制御の双方で順調に成果を挙げた.まず,分散型位置・姿勢協調制御問題に対して,ドローン群のフォーメーション制御問題を考察し,ドローン間の相対位置・速度の状況から動的に衝突を回避できる分散型協調制御手法を新たに提案した.つぎに,学習型位置・姿勢制御問題に対して,ドローンのモデル化が難しい要素をガウス過程回帰と呼ばれる機械学習手法に基づいて学習し,学習したモデルの不確かさに対してロバストな制御手法を新たに提案した.さらに,地面付近の飛行で特に空力干渉を強く受けることに着目し,提案手法によるドローンの着地実験を行うことにより提案手法の有用性を示した.ここでは,研究代表者らが新たに考案した位置・姿勢制御が容易な全駆動ドローンを対象としており,このドローンに対してオンライン計算に優れた逐次型最適制御手法も新たに提案した. また,主目的であるドローンネットワークの学習型位置・姿勢協調制御理論の構築に向けて,協調制御理論と学習機構の融合の検討を行った.ここでは,主にガウスフィルタと呼ばれる研究代表者らが考案した統計情報から確率過程を推定する手法の適用可能性を考察した.対象は異なるが,ガウスフィルタを活用した統計情報に基づく逐次型最適制御手法をプラグインハイブリッド自動車に対して新たに提案しており,本手法のドローンへの応用も期待している.さらに,関連研究としてドローンのロータ配置構造に対する耐故障性の解析や拘束付き位置・姿勢制御手法の提案,実際の工学的応用を考慮したドローンネットワークの協調貨物運搬制御手法の提案も行った. 以上の成果は,学術論文や多くの会議論文に採択されることで,学術的に意義が認められている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度は,主目的であるドローンネットワークの学習型位置・姿勢協調制御理論の構築に向けて,部分課題としてドローンネットワークの分散型位置・姿勢協調制御,およびドローン単体の学習型位置・姿勢制御の双方で順調に成果を挙げた.特に,後者では単体のドローンに対してではあるが当初の計画では想定していなかった実機実験を実施し,提案手法の有用性を示すことができた.また,関連研究としてドローンの構造解析や制御に関する新たな課題にも着手し,これらに対しても順調に成果を挙げている.以上のことから,本研究は当初の計画以上に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
ドローンネットワークの学習型位置・姿勢協調制御に向けて,引き続き「学習機構の選定」,「分散型学習機構の考案と協調制御手法との融合」,「クアッドロータ・ヘキサロータを用いた実験検証」の3つの主要課題に取り組む. 「学習機構の選定」では,既にガウス過程回帰とガウスフィルタの応用可能性を検討しているが,今後は反復学習や深層ニューラルネットワークなどの学習手法の検討も行う.「分散型学習機構の考案と協調制御手法との融合」では,既に単体のシステムに対して提案している手法をマルチエージェントシステムへ応用することを試みる.ここでは,まずは2, 3機の少数のドローンに対する学習型協調制御手法の提案を行い,そこから一般化に取り組む.「クアッドロータ・ヘキサロータを用いた実験検証」については,研究代表者は既に複数のドローンを用いた協調制御実験を行える環境にある.しかし,学習機構は比較的計算コストが大きいため,ドローンネットワークに実装するためには計算機の分散化にも取り組む必要がある. また,以上の3つの課題に加えて,前述の協調貨物運搬など,実際の工学的応用を視野に入れた制御問題も考察していく.
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