令和二年度は複雑ネットワークにおける合意制御問題に取り組んだ.従来の凸最適化に基づく手法と比べて飛躍的に高速な合意を達成可能な枝重みの作成のための,深層学習に基づくアルゴリズムを提案した.このアルゴリズムは実装が容易であり,かつ任意の構造を持つネットワークに適用できるという利点がある.また,従来の有限時間合意手法と比べても,提案する重みによる合意は数値的な安定性が非常に高いという利点も存在する.本結果は IEEE Access 誌に掲載された. また,これまでに得た知見に基づき国際会議におけるパネル討論や一般誌への寄稿を行った.国際会議 59th IEEE Conference on Decision and Control では “Panel Discussion: What have we learned so far?” に参加し,新型コロナウィルス感染症の抑え込みについてネットワーク疫学の国際的な専門家との討論を行った.また第1回SICEポストコロナ未来社会ワークショップでは“社会的距離戦略の数理:ネットワーク科学の観点から”と第して講演を行った. 従来型のネットワークダイナミクスからスコープを広げて,自己組織化する群れの制御問題にも取り組んだ.特にshepherding問題と呼ばるタイプの群れの誘導問題に焦点をあてた.従来型のアルゴリズムでは取り扱いの難しい,追われる側の群れに異種性が存在する場合にも,効果的なshepherdingが可能であるアルゴリズムを提案した.
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